名古屋市の東に位置する東郷町(愛知県)の工業団地の一角にあるチヨダ工業株式会社は、世界初の技術を世に送り出した。
その技術は、本業である自動車関係のプレス品をメインに、金型の設計・製作・試作までを手掛ける金型メーカーとは異なる、独立した部門で開発されていた。生み出された世界初の技術とは、「木質流動成形」だ。
松・竹・梅の木片で「松竹梅」のおめでたいお猪口ができ上がる!
ふだん、あまり耳にしたことがない「木質流動成形」だが、簡単に説明をすると、木質素材であれば、ある添加剤と熱と圧力で、プラスチックを加工するように自在に形を変形することができる、驚くべき技術である。
従来の木質素材の加工は、単純に切って接着する方法、水蒸気加熱して求める形に少しずつ近づくよう固定をしながら成形をする「曲げ」と言われる方法や、ノミなどの道具を使い削り出し求める形にしていく方法がとられている。
この技術は、木質の細胞壁間が添加剤と熱で滑り出す状態をつくり、そこに圧力をかける。その後、細胞は固定し木質が元来持っている、戻ろうとする力がなくなり、でき上がった製品は安定した形を保つこととなる。
また、この技術は単体の木質を加工するだけでなく、複数の木質でも可能である。たとえば、松・竹・梅の木片を型に入れると、松竹梅のおめでたいお猪口ができ上がる。さらに現在燃料として使われているチップ材の活用も可能である。SDGsの目標の一つである「持続可能な資源(木質素材)」を使った、さまざまな場面に応用が利く。
コスト的な問題は重要だが、プラスチック製品の代用が木質素材になることも十分に考えられるわけだ。