【どうなる!? 子育て】ちぐはぐな教育現場 進む女性活躍の陰で浮き彫りとなる教師の「精神的」負担(鷲尾香一)

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   教育職員の精神疾患による病気休職者数は5212人で、全教育職員数の0.57%にのぼる。

   2019年12月14日に文部科学省が発表した「平成30(2018)年度 公立学校教職員の人事行政状況調査」で公立学校の「教職員の姿」が浮き彫りになっている。

  • 教師の仕事は精神的な負担が大きい……
    教師の仕事は精神的な負担が大きい……
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減らない教師の病気休職者

   この調査は、公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、 特別支援学校の教職員に対して毎年行われており、2018年度の病気休職者数は7949人 と、全体の0.86%にのぼっている。

   このうち、精神疾患による病気休職者数は冒頭のとおり5212人だが、2007年度以降、5000人前後で推移しており、減少の兆しは見られない。2018年度も、前年度より増加している。

   病気休職者数は特別支援学校(1.12%、カッコ内は全体に占める割合で以下同じ)、中学校(0.89%)、 小学校(0.87%)の順で比率が高いのだが、精神疾患者では小学校と中学校が(0.59%)と高くなっている。

   病気休養者のプロフィールは、病気休職者 、精神疾患者とも男性よりも女性の比率が高くなっている。職種では校長や教頭よりも圧倒的に「教諭等」が多く、年代では病気休職者では50歳代以上が多いが、精神疾患者では30歳代が全体の0.69%、40歳代が0.64%と多く、30、40歳代の現場に立つ教師の精神的な負担の大きさがうかがえる。

   また、懲戒処分または訓告などを受けた教育職員は5978人(0.65%)で、前年度から869人も増加した。その多くは、交通違反・交通事故(2761人)によるものだ。

中学生への体罰、被害生徒は470人

   その一方で、「わいせつ行為等」により懲戒処分などを受けた者が282人(0.03%)と、前年の210人から増加して、過去最多となった。

   「わいせつ行為等」で処分を受けた教職員のプロフィールは、男性が97.9%、女性が2.1%となっており、年齢層では30歳代、50歳代以上、20歳代の順。学校別では、高等学校、中学校、小学校の順。わいせつ行為等の相手は、自校の生徒が35.1%、その他19.2%、18歳未満の者15.2%、自校の教職員14.5%の順だった。

   わいせつ行為等が行われたのは、その他勤務時間外63.8%で圧倒的に多いが、放課後 10.3%、授業中6.7%、部活動6.0%と、学校内でもわいせつ等の行為が行われている。わいせつ行為等としては、体に触れる89人、盗撮・のぞき48人、性交41人の順となっている。

   また、「体罰」による懲戒処分等も、2018年度は578人(0.06%)が受けている。前年度の585人から減少しているものの、引き続き500人以上の生徒が体罰を受けている。

   発生件数が多いのは中学校(222件)、小学校(175件)、高等学校(158件)の順だが、被害を受けた児童生徒人数では中学校470人、高等学校383人、小学校266人の順となっている。

   体罰が行われたのは小中学校では授業中、高等学校では部活動が多い。一方、体罰を行った教職員は50歳代以上の男性が圧倒的に多く、次いで30歳代男性となっている。 分別があると思われる50歳代の男性が、もっとも体罰を行っている。

   さらに、昨年(2019年)話題となった教職員同士のパワーハラスメントでも、18年度には32人が懲戒処分等を受けている。病気休職者数のうち精神的疾患の割合が約66%と非常に高いことや、「わいせつ行為」「体罰」での懲戒処分の多さからは、教師という職業の特殊性が見て取れる。

進んでいる教育現場の女性活躍

   さて、学校という職場の社会的な取り組みがどうなのか――。女性の社会進出が言われて久しいが、2019年4月1日現在の女性の管理職(校長、副校長および教頭)は1万2808人で前年から638人増加した。女性管理職の割合は18.6%で、連続して過去最高を更新している。

   ただし、校長・副校長・教頭に占める女性の割合は各々、小学校が20.6 %、32.1%、27.0%と、中学校の7.4 %、15.1%、13.3%、高等学校の7.5%、10.9%、10.0%を大きく上回っている。

   ちなみに、都道府県別で校長に占める女性の比率が高いのは広島県の30.5%。石川県27.4%、神奈川県27.2%、富山県24.4%、高知県23.2%の順、低いのは山梨県7.0%、北海道7.9%、宮崎県8.2%、長崎県8.7%、福島県9.3%の順。女性比率がもっとも高い広島県の小学校では46.3%と、おおよそ2校に1校が女性校長となっている。

   また、校長・教頭ともに圧倒的に50歳代が多い中で、校長の最年少は40歳、女性では43歳、教頭の最年少は34歳、女性では38歳だった。

   厚生労働省の「平成29(2017)年版 女性活躍推進法に基づく取組状況」によると、日本の女性管理職の比率14.3%と比べると、教職員の女性管理職比率18.6%は高く、学校という職場は一般企業に比べて女性の社会進出が進んでいるようだ。

   また近年、社会的な取り組みの大きな指標でもある育児休暇については、育児休業などの取得割合は、男性で2.8%、女性で96.9%となっている。厚生労働省の「平成29年度 雇用均等基本調査」によると、育児休業取得率の平均は男性5.14%、女性83.2%で、教職員の女性の育児休業取得率は平均を大きく上回っている。

   こうして見ると、学校という職場は社会的な取り組みの面では一般企業よりも進んでいるものの、教師という仕事は精神的に大きな負担を抱えるものであることが浮き彫りになっている。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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