職場の「潰し屋」に対抗! 産業医が伝授する「パワハラ上司」に打ち勝つ術とは......

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大原則は「近づかない」

   近年はパワハラ被害の数々が報告されたが、パワハラする側は意に介さず(?)か、抑止力は働かず。ついには政府が動き出す。2019年に、職場でのパワハラ防止策に取り組むことを企業に義務づける「労働施策総合推進法」の改正案を国会に提出。改正労働施策総合推進法は、5月に参院本会議で可決・成立し、その内容から「パワハラ防止法」の別名でも呼ばれるようになった。この法律により、大企業は20年6月、中小企業は22年4月頃から防止対策が義務化される。

   しかし、この間にもパワハラ上司側は「厄介な存在」ぶりを発揮。2019年8月、大手電機メーカーの新入社員の20代男性が自殺し、上司である教育主任が「自殺教唆の容疑」で書類送検されている。新入社員の男性が自ら命を絶った現場の公園には、教育主任から「死ね」などと言われたことなどを記したメモが残されていたとされる。

   本書で井上さんは、このケースに言及したものではないが、こうした潰し屋上司に対しては正面から相手をしてはいけないという。潰し屋上司に何とか変わってもらおうといろいろと挑戦することは「まったくもってムダというしかない」ときっぱり。

「人はそんなに簡単に変われないし、少しの話し合いなどで変わるような上司であれば、部下に平気でプレッシャーをかけ続けることはしないでしょう」

   だから、相手である上司を変えようとするのではなく、自分のほうが考え方を変えて対応する必要がある。その大原則は「近づかない」ということだ。

   「近づかない」というのはどういうことか――。まず物理的な距離として、「できるだけ近づかないようにしましょう」と著者。潰し屋上司になるような人物は承認欲求が強く、自慢話を披露しては周囲に「すごいですね」と言われたいと考えている。うかつに近づくと、この欲求を満たすための存在として扱われるだけだという。

   そのうえで心理的間合いを取るようにするのだが、その際に使うのは、うつ病などの治療に使われる「メタ認知」。その特質から、頭のなかで実物以上に巨大化してしまっている「潰し屋上司」を、「ちっぽけな存在」へと認知を変えるのだ。相手を小さく見ているからこそ、何か指摘されても心に余裕を持つことができるわけ。そして、「ご指導ありがとうございます」などと、過剰なくらい丁寧に礼をいえば、上司は承認欲求を満たされるだけで、こちらの内心には気づくことはない、と解説する。

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