「運転手さん、お釣りはいらないよ」
「ハイ、ありがとうございます!」
タクシーを利用したことがある人なら、こんな言葉をかけた経験があるだろう。
しかし、世はキャッシュレス決済時代。タクシー業界でも8割近くが導入している。便利になった半面、「お釣り」の分のチップ収入が減って、タクシー運転手がさみしい思いをしていることが調査でわかった。
3割の運転手が「お釣りチップがなくなり寂しい」
「ミドルシニアのお仕事ナビ」を運営する大成広告社(東京都中央区)が2020年1月8日、「タクシー運転手の働きがい調査」を発表した。40代~60代のタクシー運転手90人を対象に、「キャッシュレス決済」や、東京五輪・パラリンピックを控えて外国人乗客が増えることなどについてどう思うかを聞いた調査だ。
キャッシュレス決済を導入しているのは78.8%に達した。ところが、キャッシュレス決済についてどう思うかを聞くと、1位は「楽になった」の44.4%だったが、2位は「小銭がないお客様の『お釣りはいらないよ』がなくなって寂しい」で27.8%もいた。4人に1人以上だ。機械の使い方に戸惑うという人も10.0%いた=図表参照。
キャッシュレス決済についてどう思うかの自由回答でも、
「(チップがなくなり)月に1万円以上の減俸だよ」
という嘆き節が聞かれた。また、
「機械がよく不具合になる」
「納金処理が面倒」
「売上からキャッシュレス決済の手数料が引かれるのは不満」
というネガティブな回答が多く、肯定的な意見は、
「楽になった感覚はないが、お客様の選択肢が増えたことはよいこと」
の一つだけだった。
また、2020年に外国人乗客が増えることについては、「英語への不安がある」が36.7%、「日本をご案内できることが嬉しい」が16.7%だった。自由回答でも、
「料金の支払いで問題が起きそう」
「言葉がまったく通じない外国人は困る」
「日本人のモラルが通用しないので、小さなトラブルが続出すると思う」
といった不安の声が多かった。その一方で、
「たかがタクシーだが、それでもおもてなしの心があることを感じてほしい」
「英会話の勉強を触発されている」
といった前向きの声もあった。