全斗煥の血みどろ権力抗争劇「第5共和国」が好きなワケ
ところで、中央日報が引用した「風知草」の記事には、安倍首相が韓国ドラマのファンであるという内容は1行も出てこない。しかし、中央日報はこう続けるのだ。
「安倍首相はかつて韓国の政治ドラマ『第5共和国』の熱狂ファンでもあった。俳優イ・ドクファが全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領を演じたこの全41部作のドラマは、日本でDVDが販売されている。東京の日本情報筋は『安倍首相は普段、渋谷区の私邸から首相官邸まで出退勤するが、時々執務室のある首相公邸で宿泊することがある。安倍首相はその時に集中的に映画やドラマを見ると聞いている』と伝えた。年末年始休暇には昭恵夫人と映画館に行ったりもする。『ゴルフで汗を流し、映画とドラマで緊張を解く』のが安倍首相のストレス解消法だ」
「第5共和国」とは韓国MBC制作の大長編実話政治サスペンスドラマだ。1979年10月に朴正煕(パク・チョンヒ)大統領がKCIA(韓国中央情報部)部長に暗殺される。そして同年12月、全斗煥(チョン・ドゥファン)国軍保安司令官がクーデターで実権を握り、戒厳令を発する。民主化を要求する多くの市民を虐殺した光州事件などを経て、1980年に大統領に就任、「第5共和制」をスタートするまでの凄まじい権力抗争を描いている。
なぜ、安倍首相がこんな血みどろの韓国ドラマを好んでいると、中央日報は書くのか。じつは、中央日報は2018年8月3日付でも「韓国ドラマ『第5共和国』を見たという安倍首相、政治手法も学んだ?」という見出しで韓国ドラマ好きと言われる背景をこう説明している。
「『第5共和国』の全41話の中には、軍事クーデターと光州事件のほか、学生活動家や社会運動家を一斉に検挙して軍隊で教育する三清(サムチョン)教育隊、政権の批判を許さない言論統廃合、民主党創党妨害事件などがエピソード別に描かれている。過去の韓国の言論統制シナリオ、政権に批判的な民間人の監視などが安倍首相の権力管理法と似ているのではという分析も一部で提起されている」
中央日報が、全斗煥元大大統領の政権に批判的な民間人監視システムと、安倍首相の政治手法がよく似ている例として挙げているのが、元文部科学省事務次官・前川喜平氏のケースだ。前川氏は、加計学園の獣医学部新設問題で「首相官邸の圧力があった」と国会で証言、その後退職した。安倍首相は政権を裏切った前川氏を民間人になった後も許さなかった。文部科学省が、前川氏が中学校で講演した内容の録音データを提出するよう学校に要求している。