入社1か月で退社したワケは......
CQ(文化指数)が低いまま、あるいは認識がないまま、相手の文化的背景を知らぬまま、外国人と協働や取引、接客をすると、予想もしなかったことが起きる可能性があることが本書には示されている。
著者がインド人男性を相手にカウンセリングしたときのこと。彼は何やら不満そうなのだが、そのことはともかく、あとになって「他にもっと権威のある先生」の紹介を求めてきたという。日本人の感覚からは失礼な要求であり、自ら別の人を探しそうなものだ。著者がのちのCQの研究で分かったところでは、インドではクライエント(来談者)がカウンセラーやセラピストが力不足と判断した場合、よりパワーのある人を要求するのは自然な成り行きなのだという。
ある企業に入社した20代のベトナム人男性は、仕事上でミスをしてしまい、それがきっかけで、わずか1か月で辞めしまったという。彼の上司である40代マネージャーは、自主性を重んじるスタイルの指導を心がけており、ベトナム人男性のミスについては、声を荒げることもなく注意したものだった。
ベトナムは周辺国による度重なる侵略と戦い続けてきた歴史を持ち、国民はそのため独立心が強くプライドが高い一面があるという。そのことはベトナム人に限ったことではなく、ベトナム人であっても人によるのだが、一般的に指導や叱責には敏感で、とくに他の人が見ている前でのことだと、プライドを傷つけてしまう可能性があるという。
ほかに、集団主義的な考え方が強い中国人、勤務時間をめぐり日本人上司と折り合えないネパール人、「不測の事態に備える」ことが理解できないマレーシア人―などのほか、口座開設を希望する外国人の対応で戸惑う金融機関従業員のケースなどが紹介されている。