自宅ではAIスピーカーをフル活用
デジタル機器といえば、高齢者の多くは自分たちには縁がないと思いがち。いろいろなものを使いこなすためには、説明書を丹念に読み込んだり、店の担当者ら詳しい人から説明を受けたりする必要があり、若宮さんは、「やはり『難しい』と感じる方も多いでしょう」と理解を示す。高齢者は若い世代より国語力に優れているが、若宮さんによると、「マニュアルなどを読みながら、手順を追って作業をする」という「実用国語」が苦手なのだという。
だが、それであきらめてはいけないとシリをたたく。それは「私たちは、すでにデジタル機器に囲まれて生きている」から。シニア世代も「もう慣れるしかない」と明るく割り切って進むしかないのだ。しかも今後は、デジタル化がますます進み利便性が高まるなかで、高齢者にも追い風が吹き始めているから、これからはチャンスなのだ。
若宮さんが「これぞ画期的!」と感動したものがある。まさに追い風を感じさせたモノ。それはAIスピーカーだ。通信が5Gとなるこれからはますます、身の回りのあらゆるものがネットでつながり、それらをAIスピーカーを通じて言葉で操作することができる。
「AIはどんな言い方をしても分かってくれます。ですから、操作手順を覚える必要がない。『これはすごいな!』と思った」と、若宮さん。「『間違ったらどうしよう』『通じなかったらどうしよう』なんて心配しないで大丈夫」と励ます。方言が心配な人には「あらかじめ登録しておけばいい」とアドバイスを忘れていない。
若宮さんは自宅ではAIスピーカーをフル活用。テレビもロボット掃除機も声を発してオン・オフ操作をしており、スケジュール管理も任せているという。今後は顔認識を使って名前を教えてくれるようになれば、ますます高齢者には役立つと予想。こうしたデジタルテクノロジーは、高齢者の自助の切り札であり、エバンジェリストとして開発や利用の拡大を訴えているという。
本書では、インターネットの接続など基本的なことから、キャッシュレス決済までカバーしたスマホの使い方、セキュリティーをめぐる注意点、シニアの機能を補完するデジタル機器などまでを概観。多くのことについてアナログとの対比で説明され、わかりやすい。高齢者向けではあるが、両親などでデジタルになじみ切れない高齢者が周囲にいる人にとっても、説明のための参考書になる。
「老いてこそデジタルを。」
若宮正子著
1万年堂出版
税別1100円