企業の利益増は人件費の圧縮
データを分析してわかったことは、2019年までの6年間、企業の売上高は目立って増加したわけではないこと。つまり、日本経済は量的に拡大していないのだが、それにもかかわらず利益が増えたのは、企業が人件費を圧縮したからだったのだ。
しかし、労働力不足の現状で多くの企業が人手不足に頭を抱えるというのに、人件費が圧縮されたということはにわかには信じがたい。労働者が希望を持って働くためにも、そのカラクリはぜひ解明されなければならない。詳しくは、企業を規模別、業種別などに分けてみるなど細かい経済構造に踏み込んでの分析が必要だが、大まかには、負のスパイラル的な構造があるよう。
それは、こういうことだ。
景気拡大に乗り零細企業から、より規模の大きな企業に人員が転じるが、形態は非正規雇用であり、給与水準が零細企業のときとあまり違わないか、それより低くなったことなどが考えられる。このため大企業の給与水準も平均でみると低下することになった。零細企業が低賃金労働の「プール」となり、ここから供給される労働者が非正規雇用となり、家計所得が増える流れとはならず、消費も増えないのだ。このことがまた、零細小売業や飲食業の売り上げ減少のもととなり、これらも減量経営を強いられることになる。