2020年の正月に入り、米国とイランの対立激化で中東情勢の危機が高まったこともあり、金の価格が上がっている。
「安全資産」として金を買う一方、高値に乗じて自宅の引き出しに眠っていた金の装飾品を売る動きが広がっている。なかには「インゴット」と呼ばれる金の延べ棒を手放す人もいて......。
40年前の金ブームも米国VSイラン対決
国内で金地金(金ぢがね)を取り扱っている田中貴金属工業が毎日ホームページ上で公表している金価格推移データによると、2020年1月10日時点で1グラムあたり6042円だ。年初の初値が1月6日の6014円、7日6018円、8日が最高値の6149円だったが、9日には6042円と若干下がった。
昨年12月27日が5877円だったから、1月3日に米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を暗殺してから一気に中東の緊張が高まり、金価格が670円以上高騰したことになる。最高値を記録した8日はイランが報復に出てイラクの米軍基地にミサイルを撃ち込んだ翌日。「第三次世界大戦か」と最高潮に緊張が高まった時だった。しかし、トランプ大統領が「アメリカは反撃に出ない」と表明したため、100円近く値を下げたが、完全に中東の危機は収まっていないため金価格は横ばいを続けている。
1月8日の6149円は、1980年1月21日に瞬間風速的に記録した6495円に続く史上2番目の高値となった。この時の高値の背景には、1979年2月のイラン革命、同11月のイランによるテヘランにある米国大使館占拠など世界的な大事件の続発があった。皮肉なことに今回同様、米国とイランがからんでいたのだ。
「有事の金」という言葉があるように経済危機の世には「安全資産」として金価格が上昇する。大手リユースデパート「コメ兵」の各店舗にも金を売る客が増えている。今年1月6日~9日の4日間と昨年1月の同期間を比べると、買取成立客数で前年比28%増、買取成立金額では95%も増えた。売上がほぼ2倍になったわけだ。