政府の言ってる「リカレント教育」じゃダメ! 生涯現役が可能なマルチステージ型の稼ぐ力とは

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「単線型」から転換せよ

   必要となるのは「仕事」と「学び」を繰り返す「マルチステージ型」のライフモデル。これまでは「『教育』→『勤労』→『引退』」と3ステージを経験すれば十分という「単線型」ライフモデルだから、根本的転換が求められる。

   「単線型」では、社会人となって学ぶべき知識は、会社が研修などで授けてくれたので受動的な姿勢でも定年までやっていけた。手厚い退職金もあり年金などの社会保障も近年盛んに取りざたされる懸念はなく、節目の学び直しなど考えなくても老後を安泰に過ごせる見通しが持てたものだ。

   しかし現代では、老後の生活費が公的年金だけでは不足する可能性が指摘されることを考えれば、生涯にわたり稼ぎ続けられる力を誰もが身に付けねばならない時代といえる。そうした時代に合わせたマルチステージ型だ。

   「リカレント教育」という言葉が認識されたのは良いことなのだが、政府の、的外れともいえる方向性や企業の理解不足、個人が積極的に活動しようとしても環境が整っていないことが今のところの課題。大手百貨店が48歳以上の社員に対して希望退職者を募り、一人につき1億円をかけてリストラを実行したことについて「1億円かけるくらいなら、再教育の選択肢があってもよかった。48歳といえば、本来は脂の乗った働き盛り。それを再教育の機会も与えず放り出すのは経営者の責任放棄」と指摘する。

   個人レベルでのリカレント教育をめぐっては、欧米の諸外国に比べ大学、大学院の受け入れ態勢が充実しているとはいえず選択肢が限られるのが現状。インターネットを活用してプログラムを自分で組むことなどを検討するのも一つの手のようだ。

   本書では、諸外国の実例のほか、リカレント教育を採り入れている企業についても詳しく紹介されている。就職の際のガイドとしても使えそうだ。著者の特徴である明快さと歯切れの良さもあり、現代で「生涯現役」の重要性がしっかり認識できる一冊。

「大前研一 稼ぐ力をつける『リカレント教育』― 誰にも頼れない時代に就職してから学び直すべき4つの力」
プレジデント社
税別1400円

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