ビジネスの現場で、最も重要なスキルは何だと思いますか?
営業力、交渉力、企画力、プレゼン力、事務能力、それとも上司や同僚、部下、取引先、お客さまとの人間関係力。もちろん、これらのチカラは大切ですから、一人前のビジネスパーソンであれば持っているべきですし、高ければ高いほど、有利なことは確かです。
でも、これらのチカラに共通しているものは何か、考えてみてください。そうなんです。これらのチカラのすべての根底にあるのは「言葉」なのです。誤解を恐れずに言うならば、言葉を制する者はビジネスを制するということなのです。
「短い言葉を武器にする」弓削徹著(フォレスト出版)
キャッチコピーがビジネスで有効である理由
キャッチコピー(短い言葉)の重要性は、ビジネスをしている人であれば誰もが知っています。
「カッコいいキャッチコピーをつけたのに、なかなか売れない」
「エッジを立てたら、うさん臭さが残って逆効果になってしまった」
など、失敗例も枚挙にいとまがありません。さて、どうすべきでしょうか――。
著者の弓削徹さんは仕事柄、いろいろな展示会に出かけるそうです。会場のブースを眺めながら歩くと、各社が「これがウチのウリ」と信じるポイントが、かなりズレていることに気が付きます。そんなズレたキャッチコピーでは、訴求効果を期待することは難しいでしょう。
弓削さんは、
「キャッチコピーとしてウリが掲げられていますが、どう読んでも、何度考えても、何がすごいのか、どこが他社と違うのかが分からないものが多いのです。じつは、ほとんどがそのようなキャッチコピーで多くの会社が陥りがちな罠ともいえます」
と説明します。
キャッチコピーには強い言葉がなければ、印象にも記憶にも残りません。残らないキャッチコピーは、なかったのと同じだと、弓削さんは言います。ダメなキャッチコピーとは、どのようなものでしょうか。
次のような話し言葉のキャッチコピーがあると仮定します。果たして、このキャッチコピーで、お客さまの気持ちをつかむことはできるでしょうか?
「多くの人がまた買いたいと言ってくれます」
「多くの人が支持をしています」
あまりにも平凡すぎてキャッチコピーとしてはまったく響かないし、記憶にも残りません。たとえば、「多くの人」ではあまりに抽象的すぎます。多くの人とはどれくらいの人なのかを、きちんと数値化した結果が91%なら、その数字を書き込んだほうが、インパクトがあります。
また、買いたい人、買ってくれる人は、リピーターのことです。リピーターに訴えなくてはいけませんから、最後は「?」でシメるとメッセージ性が強まります。
「91%がリピーターになってしまう秘密とは?」
本書のテーマである、短いすっきりとしたキャッチコピーができ上がりました。これに、具体的なキーワードを入れ込めばさらに精度がアップします。
うまく書くのではなく「ウリ」を書く
弓削さんは、言葉は有意義でなければ意味がないと言います。ビジネスシーンにおいて、「相手に話を聞いてもらいたい」とか「自分の意見や企画を通したい」と思ったら、的確な言葉を適切な長さで伝える必要があります。
これは、「言葉で人を動かす力」を身につけることを意味します。
とはいえ、
「言葉で人を動かすなんて無理」
「コピーライターみたいな言葉のプロではないので、スキルがない」
「人見知りするタイプなので、大勢の前で話すのは苦手」
などと、尻込みをされる方が少なくありません。
本書では、全国の中小企業の経営支援のためにキャッチコピーやネーミングのスキルやノウハウを指導してきた弓削さんが、「短い言葉で聞く人にインパクトを与え、動かす」ための方法を伝授しています。
言葉選びの基礎から、プロのテクニックまで学ぶことができます。
うまく書くのではなく「ウリ」を書くスキル。もし、あなたがこのテクニックを自由に使えるようになったとしたら、ビジネスパーソンとして大きな武器を手にすることになるでしょう。(尾藤克之)