NYタイムズが指摘「ゴーン氏プレゼンが残念だったワケ」
私が見たなかで一番センセーショナルだと思った見出しは、英紙ガーディアンの記事です。
Carlos Ghosn likens arrest to Pearl Harbor as he faces media
(カルロス・ゴーンは、メディアの前で、自身の逮捕を真珠湾攻撃にたとえた)
likens A to B:AをBにたとえる
確かに、ゴーン被告は会見で、逮捕がいかに「不意打ち」だったかを強調するために真珠湾攻撃にたとえていましたが、見出しになるとかなりセンセーショナルな印象です。
ガーディアン紙と異なり、意外にも、一歩引いたスタンスで報じていたのが米紙NYタイムズでした。ゴーン被告の発言内容よりも会見の様子にフォーカスしています。
Carlos Ghosn, Mum on Tokyo Escape, Unleashes a Rambling Defense
(カルロス・ゴーンは、東京からの脱出劇には触れなかったが、とりとめのない自己防衛を爆発させた)
mum:何も言わない
unleash:爆発させる
rambling:とりとめのない
It was part corporate presentation, part legal defense, part rambling tirade.
(会見は、企業のプレゼンでもあり、法的防衛でもあり、とりとめのない長演説だった)
tirade:長い演説
記事を読んで思わず笑ってしまったのが、「ゴーン氏はパワーポイントを使って、まるで企業のプレゼンのように次々と資料やデータを映しながら話した」ものの、「But there was a problem: The text was too small for anyone in the room to read」(でも、問題があった。それは、テキストの字が小さすぎてその場にいた誰も読めなかったことだ)という指摘です。
確かに、BBCの映像ではできるだけアップで映していましたが、文字が小さいうえに光が反射していてよく読めませんでした。NYタイムズの記事からは、必死にプレゼンするゴーン被告の意図とは裏腹に、せっかくのパワーポイントが見えないという「残念ぶり」が伝わってきます。
NYタイムズは単独インタビューも行っていて、そのなかで「世界的な大企業や一流大学から新たな依頼が続々と届いている」というゴーン被告のコメントを紹介しています。
ゴーン被告によると「A lot of people want to get in contact with me」(たくさんの人が私とコンタクトを取りたがっている)そうですから、この先、ゴーン被告の露出が増えて、さらなるドラマが見られそうです。
ゴーン被告の会見をめぐる報道からは、メディアによって「注目ポイント」や「評価」が異なることがよくわかります。「どこを切り取ってどう伝えるか」がメディアの本領だからです。
英語メディアの報道から日本の報道だけでは気づかない視点を知る......。今年も数多くの視点をお伝えしていきたいと思います。(井津川倫子)