SNSを頻繁に更新して「いいね」集めに頑張っても、なかなかうまくいかずに悩みを抱えるユーザーは少なくない。ネットやスマホのことをほかの人よりよく知っているというだけで、会社のネット販売担当を任され、途方に暮れ結局辞めてしまった若手社員もいるらしい。
「いいね」集めの不調や、ネットでの販売がうまくいかないのは、アピールする文章やコピーができないことが理由だと指摘するのは、本書「ポチらせる文章術」だ。「文書の力で商品・サービスを売りたい人はもちろん、ブログやSNSで発信力上げたい人に必ず役立つ」と救世主として名乗りを上げている。
「ポチらせる文章術」(大橋一慶著) ぱる出版
「売りにくい商品を売ること」が得意
「ポチらせる」の「ポチ」は、パソコン操作でマウスをクリックしたときの音の表現。インターネットの通販サイトで購入ボタンを押すことが一部で「ポチる」というようになった。1970年代の人気アニメ「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」で、悪役のボヤッキーがスイッチなどを操作するときに発する「ポチっとな」というセリフからの派生とされる。
著者の大橋一慶さんは「株式会社みんなのコピー」代表を務める「売れるコトバ作り」の専門家。「言葉で商品やサービスを買わせるプロ」で、なかでも「『売りにくい商品を売ること』が得意」でクライアントの評価は高く、カリスマコピーライターといわれる。
大橋さんが本書で何よりも強調しているのは「キャッチコピー」の重要性。少ない分量の文字数で、相手の気持ちを引き付け、本体の「ボディコピー」に誘導するようにしなければならないという。そのためのテクニックを伝授している。
知る人ぞ知る存在であり、フェイスブックのページには1万件以上の「いいね」がつく。SNSやブログでの発信力にも定評があり、本書は2019年11月初旬に初版が発行され、その1か月後には2刷が発行された。「ノウハウがわかりやすく実践的」という評判が、SNSなどを通じて刊行後にすぐ広まったらしい。
専門書50冊分
「『文書で売上変わるの?』。そう思う人もいるかもしれませんが、全然変わります。同じモノでも言葉ひとつ変えるだけで売上は天地の差」と大橋さん。その例として「歯科医院に資産運用を案内したキャッチコピー」を示す。
キャッチA「なぜ、損金として外部にはき出し続けた1000万円以上のキャッシュをいざというとき経営資金として取り戻せるのか」
キャッチB「なぜ、病院に残るお金が毎年100万円近く増えるのか?」
キャッチAでの成約数は7件。それに対して、キャッチBでは倍の14件の成約を得たという。この金融商品の価格は約1000万円。「たった数文字の違いが売上7000万円になったということです」
本書では、このAとBの違いが、なぜそれほどの差を生むのかについて詳しく説明。そのなかに「メリットではなくベネフィットを語ること」「証拠を見せる、結果を見せる」「ストーリーを語る」などのポイントがあり、いずれもが、ザイガニック効果、バンドワゴン効果といった、研究で裏打ちされたもの。だが内容は対話形式の構成でわかりやすい。「ユルいようでも、専門書50冊分のポイントが詰まってます」というから、おトク感もある。
「ポチらせる文章術」
大橋一慶著
ぱる出版
税別1400円