10月19日が「父(10)さん育(19)児」という語呂合わせで「イクメンの日」になってから今年(2020年)で10年目。
男性も家事育児を担う動きがすっかり広まったと思ったら、働く女性の過半数が夫の家事育児の協力に「不満」を持っていることが調査でわかった。
また、夫がよくやる家事と、妻が本当にしてほしい家事との間には、とても深い溝があることも浮き彫りになった。いったいどんな夫婦間ギャップなのか?
夫が一番よくやる家事は「ゴミ出し」だが、妻の希望は......
調査を行ったのは主婦に特化した人材サービス「しゅふJOB」の調査機関「しゅふJOB総研」。2020年1月6日に「夫の家事・育児を働く主婦層はどう評価したか」という意識調査を発表した。
まず、「2019年を振り返って、夫は家事・育児に十分取り組んでいたと思うか」と聞くと、「十分行っていて満足」と答えたのは19.3%、「少しは行っていて不満はない」(28.3%)と合わせると、「不満」を持っていない人は47.6%になった。一方、「全く行っておらず不満」という人が14.0%おり、「少しは行っていたが不満」(38.5%)と合わせると、過半数の52.5%の人が夫の家事・育児協力に関して「不満」を持っていることがわかった=図表1参照。
年代別にみると、「満足」している人が30代以下では29.6%と一番多いが、40代で18.2%、50代以上で14.8%と、年齢が高くなるほど夫が非協力的になり、「満足」している人が少なくなる。それにつれて、「不満」を持つ人の割合も、30代以下(44.8%)、40代(51.4%)、50代以上(54.1%)と高くなるのが特徴だ=図表2参照。
「夫が取り組んでいた家事育児」を聞くと(複数回答)、圧倒的な1位は「ゴミ出し」で43.5%、ついで「買い物」(36.2%)、「掃除や片付け」(28.7%)、「料理」(21.0%)、「洗濯」(20.5%)、「家族の送り迎え」(17.7%)、「子どもの入浴」(15.8%)などとなる。ほとんど手伝わないワースト3は「保活」(0.5%)、「PTA」(2.0%)、「介護」(3.3%)だった。
ここでおもしろいのは、「夫が取り組んでいた家事育児」とは別に「夫が取り組んだほうがよい家事育児」、つまり「夫に本当にしてほしい家事育児」(複数回答)を聞くと、圧倒的な1位は「掃除や片付け」で41.6%、ついで「名もなき家事全般」(35.2%)、「料理」(28.4%)、「ゴミ出し」(24.1%)、「子どもの学校行事」(18.0%)とだった。
妻が夫にしてほしい「名もなき家事全般」とは
下の図表3は、夫がよくやる家事育児と、妻が本当に手伝ってほしい家事育児とのギャップを表している。これを見ると「名もなき家事全般」が夫婦間の差が28.6%もあり、突出していることがわかる。「名もなき家事全般」とは、たとえばこんなコトだ。
・脱いだ衣類のポケットから洗濯前に中身を取り出す
・脱いだ後の洗濯物の袖を裏返す
・トイレットペーパーを交換する
・空になったティッシュ箱を捨てて交換する
・食事後の食器をキッチンに運びテーブルを拭く
・靴やスリッパを揃える
・カーテンや窓シャッターの開け閉めをする
・夏物や冬物の服を入れ替える
......など、日常のこまごまとした家事だ。じつは、小さな家事の積み重ねが働く女性の一番の負担になっているのだ。
夫が家事育児を十分に手伝ってくれて「満足」している女性からはこんなフリーコメントが寄せられた。
「結婚当初から、特に家事を分担しなくも、何事もできる時にできる人がやるスタンスできているので助かっています」(40代、派遣社員)
「私に出かける用事がある時などは、率先して料理をしてくれる。あまりやられると、こちらの立つ瀬がなくなるぐらいだ」(40代、在宅ワーク)
「夫が一定期間お休みを取り、主夫になってもらいました。名もなき家事の多さに驚いたと言っていました」(30代・正社員)
「いつも私の弁当まで作ってくれて、本当にありがたい」(50代、派遣社員)
「週末は料理全般と、まとめて買い出しをしてくれるので感謝している」(40代、パート)
一方、まったく手伝わなかったり、手伝い方に問題があったりして「不満」を持つ人の声は――。
「思い込みで家事をするのでかえって迷惑」(60代・契約社員)
「都合のいい時だけ、子どもの相手をして、育児をやった気でいる」(40代、パート)
「やってほしいことは多々あるが、やらせると中途半端だったり、レベルが低かったりして二度手間になる」(30代、パート)
「ちょっとやっただけで偉そうにするのはやめて」(40代、パート)
「子供たちは夫の姿を見ているので、子供たちのほうが協力的である(40代、パート)
そして、こんなあきらめの声も多かった。
「夫にとってこの家は下宿先。掃除がしてある家、洗われて片付けられている洗濯物、温かいご飯が用意してあり、お風呂はいつでも入れるようになっている」(40代、パート)
「ゲームばかりして家事を手伝う気は一切無し。ゲームをする暇があったら子供と会話してほしいのに」(40代、パート)
「家事は基本、女がやる事と思っている。本当にまったくやらない人なので、ストレスが限界を超えた。離婚を考えている」(40代、パート)
「イクメン」ブームに逆行、妻の「不満」はなぜ増える?
また、今回の調査では直近の3年間を比較すると、夫の家事育児の協力に「不満」を持っている人が、2017年(47.8%)、2018年(52.4%)、2019年(52.5%)と、むしろ増えていることがわかった。
最近、「イクメン」が話題になっているのに、これはどうしたことか。J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、調査を行った「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に取材した。
――現在、夫も家事育児を担う動きが広がっているはずなのに、なぜ「不満」を持つ女性が増えているのでしょうか。日本の男の意識改革はなかなか進まないということですか。
川上敬太郎さん「おっしゃる通り、妻の側から見れば残念ながら夫の意識改革が十分に進んでいないということだと思います。調査では妻側にしか尋ねていないため、ひょっとすると、夫は夫なりに意識を変えようとしているのかもしれません。しかし、妻が求めるレベルで家事育児ができているかどうかという観点からみると、ここ数年で夫側にあまり変化はないということなのでしょう」
「そうした事情は、以下のようなフリーコメントが象徴的です。『思い込みで家事をするのでかえって迷惑』『妻の手伝いをするという感覚でいるので、積極的に自分からやることがほとんどない』『ちょっとやっただけで偉そうにする』などです。夫は夫なりに家事育児に携わっていたとしても、『何を』『いつまでに』『どのように』行えばよいのかを、妻に確認しないまま独断で行っているとしたら、妻は不満を感じてしまうはずです」
「そして夫は夫で、せっかく家事や育児をしているのに妻は文句しか言わない、と不満を感じるという悪循環が生まれている可能性もあるのではないでしょうか」
40代の夫が「イクメン」の分かれ目になるワケ
――なるほど。「イクメン」ブームに乗って夫が家事を手伝っても、中途半端な気持ちで行うと、かえって妻側に迷惑になるということですね。ところで、妻が30代以下の夫は家事育児に協力的ですが、40代も50代以上の古い感覚の世代に劣らず非協力的ですね。40代が非協力的なのはなぜでしょうか。
川上さん「30代と40代以上との間に差が表れる理由の一つとして考えられるのは、お子さんの年齢です。子どもが小さくて手がかかるうちは、育児も家事も目に見えて大変なので、夫としても家事育児に携わろうという意識が生じやすくなります。ところが、子どもが大きくなるにつれて子育てに手がかからなくなってくると、夫の目に家事育児の大変さが入りづらくなります」
「しかし実際には、食事の量は増えるし、PTAや習い事、受験などの負荷もかかってきます。それらが夫の目に入りづらく、かつ、家事のことを『手伝っている』という考えが夫の根底にあれば、能動的に携わろうという意識は薄れていってしまいそうです。40代は夫側にとって、本当のイクメンになるかどうか、分かれ目の年代といえるでしょう」
なお、調査は2019年11月13日~22日、インターネットを通じて「しゅふJOB」に登録する働く既婚女性644人を対象にした。
(福田和郎)