神保町・すずらん通りには、個性豊かな古書店が立ち並ぶ。黄色と赤で彩られた外観で、ひと際目を引くのが「magnif」(マグニフ)だ。
入り口の雰囲気はまるで雑貨屋のようで、街行く人もつい足を止めてデイスプレイを覗き込む。
店内に広がる、鮮やかな世界
店頭のガラスケースやラックには、国内外のファッション雑誌がぎっしり並んでいる。「POPEYE」「anan」の見慣れたロゴも、表紙の当時を思わせる懐かしいデザインや、奇抜なデザインで新鮮な印象を受ける。
店内に足を踏み入れれば、時代や国を超えた雑誌が棚に並び、ひらづみの色鮮やかな表紙たちに出迎えられるだろう。
ここ「magnif」は1950~90年代のファッション雑誌を中心に、国内外のバックナンバーを揃える古書店だ。
店主の中武康法さんによると、創業は2009年。九州出身の中武さんは、大学時代を神保町で過ごし卒業後も古書店に勤めた。もともと古本に特別な興味があったわけではなかったと言う。ファッション雑誌をメインに取り扱うように決めたのは、中武さん自身がそのおもしろさに魅了されたからだ。
「雑誌を開けばファッションだけでなく、誌面のデザインや隅々の広告までリアリティを持って時代性や当時の文化を感じることができる。格好良いものだけでなく、格好悪いもの、今見たら不思議なものもおもしろいです。」
インタビュー中も幅広い層のお客さんが来店し、夢中で雑誌を探している様子が見られた。
「懐かしさから探しに来られる方、当時のファッションに興味のある方、デザイン事務所に勤めていて、その資料を探す方や海外のお客さんなど、さまざまな人が雑誌のバックナンバーを求めていらっしゃいます。(開業して)10年のあいだにも、大きく変化する神保町の街の中で、客層が大きく変化した実感はないですね。お店も男女や年齢に限らず、入りやすく感じてもらえるように心がけています」
中武さんは、そう話す。
売れ筋はスナップ写真で見せる雑誌「STREET」
売れ筋の本として用意してくれたのは、国内外のストリートファッションをスナップ写真で見せる雑誌「STREET」だ。
「この雑誌は継続してファンが多いです。海外から探しに来られるお客様もいるくらい。当時の若者の自然な表情が見られて、当時の生き生きとした様子が感じられる雑誌です。特に90年代のものがオススメですかね」
と、中武さん。
オススメの雑誌は、洋雑誌「Esquire」だ。特に好きなのは50~60年代のものだと言う。分厚く重い1冊は、表紙から中身までぎっしりで、読み応えがありそう。ビジュアル的に洗練されたものばかりで、写真やイラスト、誌面のレイアウトが読み手を飽きさせない。
「ページも内容もボリュームのある雑誌で、この時代のアメリカの活気やパワーを感じさせます。雑誌はその国の言語がわからなくても、視覚で十分楽しめる読み物なので、この雑誌を読んで、当時のアメリカに思いを馳せています」
店舗で取り扱う雑誌は、ジャンルや年代、国を、なにか特別に棲み分けようとはしていない。お客さんから問い合わせが入る、需要の高い商品は扱うようにしているが、それ以外は広く深く、「ざっくり」といった感じの、中武さんのおおらかな人柄が反映されているように感じた。
中武さんと話していて一番に感じるのは雑誌への深い愛情だ。雑誌の持つ意味に、真摯に向き合い、その誌面の中に言葉も時代も超えた新鮮さを見出し続ける。「magnif」はその基地となって、雑誌のおもしろさを発信し続けている。