グロウス・パッションが大切
米アップルの創業者の一人、スティーブ・ジョブズは2005年、米スタンフォード大学の卒業式で「好きを仕事に!」とスピーチしたことで知られるが、ジョブズ自身は決して好きでエレクトロニクスの道に進んだわけではなかった。スティーブ・ウォズニアック氏が発明した「アップルI」にビジネスの将来性を見出し、アップルを創業したという。そしてアップルの仕事を続けるうちに、後年、その仕事を愛するようになったのだ。
米ジョージタウン大学准教授のカル・ニューポート准教授は、自分の仕事を「天職」だと考えている人たちにインタビューを行い、その報告のなかで、こう述べる。「天職に就くことができた人の大半は、事前に『人生の目的』を決めていなかった。彼らが天職を得たのは、ほとんどが偶然の産物だった」。真の天職は「なんとなくやったら楽しくなってきた」から見つかるのであって、心理学では「グロウス・パッション」と呼ばれる。「グロウス」は「成長」、「パッション」は「情熱」だ。つまり「本当の情熱とは、何かをやっているうちに生まれてくるもの」という考え方だ。
「好きを仕事に!」や「情熱を持てる仕事を探せ」は、調査や研究では否定されたアドバイスであることが明白。なお消えずに、表向き有効とみられるのは、多くの人が幻想に惑わされているからに違いない。
キャリア選択の失敗につながる幻想にはほかに「給料の多さで選ぶ」「業界や職種で選ぶ」「仕事の楽さで選ぶ」「性格テストで選ぶ」「直感で選ぶ」「適性にあった仕事を求める」―― が抽出され、「好きを仕事にする」と合わせて計7項目がリスアップトされている。
就職や転職を計画している人のなかで、このうちの一つでも該当するようなら、本書を一読する必要があるかもしれない。
「科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方」
鈴木祐著
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
税別1480円