【お正月は本を読む!】「好き」を仕事にしても天職は見つからない では、どうする? 

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   キャリア選択の失敗についての嘆きは、しばしば聞かれる。近年、新卒社員の入社3年以内の離職率が高止まりしているが、離職の動機の1位は「思っていた仕事と実際の内容が違う」だ。なぜ人は就職や転職で迷路に入ってしまうことが多いのか――。

   本書「科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方」は、その原因を、進路決定の段階で、ものごとの一面にしか注目しない「視野狭窄」が起こるためと指摘、膨大な量のデータを用いた科学的分析により「後悔しない」職業選びのアプローチを提案する。

「科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方」(鈴木祐著)クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
  • 就活では「幸福が最大化される仕事」を選ぶべき
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人の脳が「職業選択」に非対応?

   一生のなかでも重大な場面の一つといえる職業選択で「視野狭窄」が起きるのはなぜなのか。それは、人類の脳に職業を選ぶための「プログラム」が備わっていないなどのため。人が職業を選ぶようになったのは欧州で19世紀に入ってからで、人類は歴史の9割で「仕事選び」に悩まず過ごしてきた。そのせいで人類の脳には「複数に分岐した未来の可能性」をうまく処理するための能力が進化しなかった――というのが、近年の研究で判明したという。

   著者の鈴木祐さんは、ヘルスケアや生産性向上をテーマとした執筆を手がけるサイエンスライター。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。これまで、10万本の科学論文を読了し、600人を超す海外の学者や専門医へインタビューを行ってきた。本書の執筆にあたって、個人のアーカイブから職業選択や人間の幸福や意思決定に関するものをピックアップしたほか、新たに数千の論文を集め、専門家約50人に取材を重ねた。

   「視野狭窄」が起きるにはもう一つ理由があり、それは「バグ」の存在。人によって種類はさまざまだが、主なものは「偏見」「思い込み」「思考の歪み」などだ。人間の脳には生得的なエラーが存在し、大事な場面で同じような過ちを犯すようにできている。

   「プログラム」の不備や「バグ」の存在により、知らず知らずのうちに考える幅が狭くなり、見えるのは「幻想」だけ。その幻想を振り払い、視野を広げることから適職選びは始まる。なお、本書でいう「適職」とは「幸福が最大化される仕事」であり、単に「自分の才能が発揮できる仕事」や「好きなことができる職場」のようなイメージではない。

   好きなことを仕事に―。しばしば聞かれるキャリアアドバイスだ。また「好きな仕事をすれば満足できる働き方ができる」と多くの人が考えているはずだ。ところが、これは幻想であり、仕事選びでやってしまいがちなミスの一つが「好きを仕事にする」ことだ。

   好きを仕事にすれば万事解決し成功といえるのかといえば、そう簡単にいくものではない。「多くの職業研究によれば、自分の好きなことを仕事にしようがしまいが最終的な幸福感は変わらない」という米ミシガン州立大学の調査結果があり、また、英オックスフォード大学の研究では「好きな仕事をした人ほど長続きしない」という結論が得られているという。

   好きな仕事に就いたとしても、面倒ごとは必ず発生するもの。そうした場合に、好きなことを仕事にしている人ほど「本当はこの仕事が好きではないのかも...」「じつは向いていないのかも...」という疑いに悩まされ、結果として、一定以上のスキルが身につかず離職につながってしまうのがパターンだ。

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