入社3年間「ベタ付き」でフォローも
インターネットの進化でメールやSNSなどが普及し「連鎖」は拡大、加速が一層容易になっている。また、転職の一般化はなお強まるだろうから、退職を防ぐことは不可能だ。連鎖に及ばないようにするために必要なのはリスクマネジメントの発想という。
企業の中には、入社3年間は人事部員が一人ひとり「ベタ付き」でフォロー。そして3か月ごとに上司や同僚がヒアリングを行い、うまくいっていないようなら配置転換するなどのケアを実施しているという。この会社の場合は、きめ細かいフォローが効果を発揮して社員のリテンション(定着)につながったそうだ。
社員のリテンションをめぐっては古くから、研修や能力開発が実施されてきたが、連鎖退職についての効果はどうだろうか。聞き取り調査では、会社にいることでスキルを向上させられることが分かるという理由で、効果があることは間違いなさそう。連鎖退職の関連では、退職者増、人手不足がにわかに発生したときでも、個人のスキルアップをしておけば、生産性や効率を落とさず過ごすことが可能だという視点があった。
厚生労働省が2019年10月に公表した「新規学卒就職者(16年3月卒業者)の離職状況」によると、就職後3年以内の離職率は、大学卒32.0%、短大卒42.0%、高校卒39.2%、中学卒62.4%。新入社員の3分の1から3分の2が、入社3年後までに辞めてしまうのが近年の現状で、また、少子高齢化の影響で、大半の企業で「人手不足感」があるという。人材の確保は「経営戦略上、喫緊の課題」。企業にとっては「連鎖退職」対策も必須の時代になっている。
「連鎖退職」
山本寛著
日本経済新聞出版社
税別850円