「ドミノ倒し型」と「蟻の一穴型」
連鎖退職には「ドミノ倒し型」と「蟻の一穴型」の2パターンがある。「ドミノ倒し型」は、ギリギリの人員で業務を回しているような職場で起こる。だれか1人が辞めたあとに補充が行われず、残された従業員の負担が重くなり、退職者が相次ぐような場合だ。手が足りない間に従業員らの間で潜在的な不満が表面化し、それがきっかけになることもある。
中堅中小企業で比較的多くみられるパターンだが、部署ごとの人数が少なく、退職者の補充が行われないと大企業でも起こりやすいことが調査で示された。
「蟻の一穴型」の連鎖退職は、だれかが辞めたことによる業務上の影響ではなく、職場の問題が何かをきっかけにクローズアップされることにより起こる。静岡の保育園のケースも、地震をきっかけにしたケースも、この型に近い。
典型的には次のようなプロセスをたどる。不合理な仕事上の慣習、理不尽な人事評価、隠蔽体質やコンプライアンス面の問題など、疑問を持った社員が退職し、それが告発の意味を込めたものだったにもかかわらず、その後も放置され、社員たちの間には「何も変わらないのか」とあきらめの気持ちが生じ、退職者が一人、また一人と増える――といったパターンだ。
この場合、退職者は「氷山の一角」。水面下には、内心で問題を快く思っていない潜在的退職希望者が少なからずおり、会社の放置の姿勢がはっきりすれば次々と姿を現すことになる。
大企業に多い傾向で、主に管理職や経営者が解決すべき課題を放っておいて起こることが多い。著者の調査では、業績悪化に際して会社が有効な対策を打ち出せない(と社員たちに思われている)ケース、人間関係などの問題があるにもかかわらず、放置されているケース、上司が部下を認める文化がない、また同僚同士で承認し合う文化がないケースなどがあったという。