日本は米中独英に比べて、富が平等に分配されている
では、富の平均から下位グループはどうだろうか。世界でGDPトップ5か国の成人一人当たりの富の平均値と中央値は、以下のようになっている。
日本は平均値こそ米国や英国を下回るが、中央値でみると唯一10万ドルを超えていて、これらの国の中でトップだ。つまり、平均的な日本人は豊かであるということである。富がより平等に分配されていると言ってもよい。
世界で最も豊かな国はアメリカだ。そんなイメージを持っている人が多いだろう。しかし、アメリカは貧富の差が大きい。中位の人の比較では、日本人はアメリカ人よりも7割近くも多くの富を有しており、圧勝している(ただし、世界にはオーストラリアやカナダなど中央値で日本をさらに上回る国が他にあることに注意)。
富の分布について、もう少し細かく見て行こう。
日本には富が110万円未満の人が全体の5%しかいない。それに対して米国では27%、ドイツでは41%もいる。一方、日本人の53%が1100万円以上の富を有するのに対して、英国で1100万円を超えるのは50%、米国は43%、ドイツが38%だ。つまり日本は、110万円以下しか純資産がない人が少なく、一方で過半数の人が1100万円以上の純資産を持つ。非常に好ましい状態にあると言えるだろう。
日本は富の偏在が少なく、相当程度の平等を達成した国だ。純資産が低い層が少なく、かといって超富裕層も非常に少ない。平均的な日本人は1000万円を超える純資産を保有していて、世界的には非常に豊かな部類に入る。このところ停滞しているとはいえ、日本は世界のほとんどの国がうらやむような富の分配が実現した国だといえよう。
世界で最も成功した「社会主義国家」と言われるゆえんである。(小田切尚登)