ストレス対応コストは年間5000億ドル
米心理学会(APA)の試算だと、職場のストレスで米経済にかかるコストは年間5000億ドル。また、米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の報告によると、日々ストレスを感じながら仕事をしている労働者の医療コストは、そうでない労働者に比べ46%高い。ストレスの半分は、人間関係の問題であり、無礼な人物の存在を許す代償として企業は大金を負担せざる得なくなっているという。
著者らが17の業界の800人にのぼる管理職、従業員を対象に実施した調査では、無礼な人間が及ぼす害は、病欠が増え生産性が落ちたり医療費が上昇させたりするだけではなかった。
じわりじわりと企業をむしばんでいるのである。調査から、職場で誰かから無礼な態度を取られている人について「48%の人が仕事にかける労力を意図的に減らしている」「47%の人が仕事にかける時間を意図的に減らしている」「38%の人が仕事の質を意図的に下げている」「80%の人が無礼な態度を気に病み仕事の時間が奪われている」――などのことが言えるとわかったという。
調査結果などから、著者はこう述べる。
「無礼な人間のせいで企業が利益や社員を失ったとしても、その多くは目に見えず、誰にも気づかれない可能性がある。誰かのひどい態度のせいで仕事をやめる決心をした人の多くは、雇用主に本当の理由を言わない。離職者が多いと、それに伴うコストが跳ね上がることになる。特に辞めるのが能力の高い社員である場合には、その人の年収の4倍ものコストがかかる場合もある」
礼節に欠ける人、無礼な態度の人が職場にいると、管理職もその対応に煩わされ時間を浪費することになる。世界最大のビジネス誌である「フォーチュン」は、この問題についての人材派遣会社の調査結果を掲載。同誌が売上を元に順位付けをしている「フォーチュン1000」の1000社の管理職らは、社員間の人間関係の修復や、無礼な人間による悪影響の対応のため、職場での時間の13%を費やしているという。この割合は1年のうちの7週間分に当たる。問題解決のため社外のコンサルタントや弁護士らの力を借りればコストが莫大になる可能性もある。