中国・ アリババの元「総参謀長」が明言「日本で近い将来大きな存在感発揮は難しい」

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

「中国の脆弱な経済インフラ」がバネ

   アリババが短期間に広い分野を統合しながらIT企業として急成長できたのは、国内のビジネスインフラが貧弱で未熟であり、伝統的な金融や決済産業がなくテクノロジーによる改革が実行しやすかったためと、本書では自己分析される。

   たとえば、中国が世界をリードするキャッシュレス化。米国では、デジタル化が進む以前に金融や決済で主流だった企業があり、キャッシュレス化を進めるうえで、アップルやグーグル、アマゾン、ペイパルをはじめとする多くのスタートアップ企業は、伝統的企業との間で激しい競争を展開中だ。米国では依然としてスマートフォンに加えて、カード、現金、小切手を詰め込んだ財布を持ち歩かねばならない。

   対照的に中国では、ATMや銀行の支店、カード会社が少なく、かつては買い物が不便だったが、伝統的なものがないぶん移行はスムーズで、いまではあらゆる支払いがスマホで完了するようになっている。

   著者のゾン氏は、日本語版スペシャルエディションである「一問一答」で、アリババやほかの中国のインターネットサービスの成功について、「足かせとなるようなレガシー(負の遺産)がなかった」「中国の脆弱な経済インフラ」「未熟な小売市場」などの言葉を使って説明。中国のネットビジネスは、中国だからこそ成功したと繰り返す。一問一答で同氏はまた、米国や日本は「成熟市場」とし、「そうした市場でアリババが近い将来大きな存在感を発揮するのは難しいだろう」と述べている。

   中国は世界有数の市場。同国でビジネスを考えている経営者、起業家らにとっては必読の一冊。

「アリババ 世界最強のスマートビジネス」
ミン・ゾン著、土方奈美訳
文藝春秋
税別2100円

姉妹サイト