どんなにクルマの性能がよくなっても......
衝突被害軽減ブレーキは、車両のカメラやレーダーにより周囲の状況を監視し、衝突のおそれがある場合には衝突警報により運転者にブレーキ操作を促し、それでも運転者がブレーキを操作せず、衝突を回避できないと判断される場合に緊急的にブレーキを作動させる装置だ。
そもそも、衝突被害軽減ブレーキの性能要件は、以下のようになっている。
(1) 静止している前方車両に対して時速50キロメートルで接近した際に衝突しないまたは衝突時の速度が時速20キロメートル以下となる
(2) 時速20キロメートルで走行する前方車両に対して時速50キロメートルで接近した際に衝突しない
(3) (1)(2)のケースで、衝突被害軽減ブレーキが作動する少なくとも0.8秒までに運転者に衝突回避操作を促すための警報が作動する
(4) 時速5キロメートルで横断してくる歩行者に対して、時速20キロメートルで接近した際に衝突しない
(5) (4)のケースで、衝突被害軽減ブレーキが作動する時までに運転者に衝突回避操作を促すための警報が作動すること
このため、メーカーが定める作動速度を超える場合や暗闇、逆光などのため、カメラにより対象物を認知できない場合、人や自転車の急な飛び出し、クルマの急な割り込み、雨・雪・霧などの悪天候、運転者がアクセルペダルを強く踏み込んだ場合などには、衝突被害軽減ブレーキが作動しない場合があるとしている。
もちろん、高齢者に対する運転免許制度の規制強化や、技術的なサポートは必要なことで、これによって高齢者ドライバーの交通事故が減少するに越したことはない。
しかし、「衝突被害軽減ブレーキが作動すると過信して事故に至ったケース」が示すように、技術的なサポートがあるから大丈夫といった「過信」が事故を増長する可能性もある。
事故に対して、「衝突被害軽減ブレーキが搭載されているのに、ブレーキがかからなかった」という言い訳が増えることがないように、高齢ドライバーへの「高齢ドライバーであることの危険性に対する」しっかりとした意識付けを行っていくことが何よりも必要だろう。
(鷲尾香一)