急騰後の急落のワケ
しかし、問題はここからです。予想どおり選挙では保守党が勝利し、英ポンドは高値をつけましたが、その後ポンドは高値から500ポイント以上も急落しています。何が起こったのでしょうか――。
一つ目の理由は、「噂で買って、事実で売る(Buy the rumor, Sell the Fact)」。市場で典型的に起こるパターンです。選挙結果も事前にかなり織り込まれていたので、目先これ以上ポンドを買う理由が尽きてしまったのです。
もう一つの理由は、ジョンソン首相が「2020年末日」と定めている離脱期限の延長を拒否したからです。
どういうことか説明します。今後、英国は「移行期間」に入るのですが、その間にEUとの間で貿易協定を締結しなければなりません。英国側としては、関税をお互いにゼロとする、従来通りの条件でFTAを結びたいところです。しかし、EU側がどのような対応を採るかわかりません。
協議すべき内容は多岐に渡り、通常数年かかるケースがほとんどです。離脱協定案では2020年末日までにまとまらなければ2022年まで最長2年延長できることになっています。
その半面、ジョンソン首相は、できるだけ早く離脱したいという意向を持っています。英国民はすでに十分すぎるほど待った。よって、これ以上の延長は容認できないという意図です。ただ、2020年末までに貿易協定案がまとまらなかった場合、合意のないまま英国の離脱となる、いわゆる「合意なき離脱」という、すっかり忘れていたリスクが顕在化してしまうのです。
おそらく、今回もジョンソン首相は、どうにかして2020年末までにEUとの間でFTA交渉をまとめることができるのではないかと思います。「合意なき離脱」の恐怖に、ポンドが売り込まれる局面が出てきそうですが、最終的にはうまく行くのではないでしょうか。その場合、また安く売り込まれたポンドがまたもや急騰することになります。
今後のレンジとしては、対ドルでは最大1.2500ドル前後まで調整する可能性はあるかもしれません。しかし、最終的にはFTA交渉がうまくまとまり、ポンドは今度こそ1.40ドル方向を試すのではないかと思います。対円では、おそらく137から138円前後ぐらいでサポートを見つけ、高値再挑戦でしょうか。
しかし、それにはFTA交渉の進展が必要です。英ポンド、今度はEUとのFTA交渉の動向が相場を左右することになると思われます。(志摩力男)