「会社側は辞めるように仕向けているのでは」
――今回の投稿と回答を読み、率直にどんな感想を持ちましたか?
川上敬太郎さん「書かれている内容からは、信じ難いほど過酷な状況だと感じました。組織としての機能が破綻しかかっているほどの危機的な状況に見えます。にもかかわらず、会社側が人員補充などの対応にNOと回答している理由がよくわからない点が不可解です」
「今回のような、パートさんが正社員をフォローして起こる問題そのものではありませんが、以前、働く女性たちに同一労働同一賃金に対する意識調査を行ったことがあります。現在の仕事について不公平だと感じたことはある人が78%もいました。パートさんが正社員と同じ仕事をしているのに報われない。日本中の職場のあらゆるシーンにおいて、不公平感を覚えている人がたくさんいると思います」
――そもそも時給930円のパートに、完全に正社員のフォローをさせるということがありうるのでしょうか? また残業なしの契約ということですが、これまで正社員と2人でやっていた仕事を、パートだけにやらせるということが、かなり無理な話だと思いますが。
川上さん「パートとして雇用されているにもかかわらず、業務内容や責任なども正社員とほぼ同じというケースが現実として起こっている職場があります。2020年4月に施行される同一労働同一賃金実現に向けた法律改正は、そのようなケースで発生する待遇格差を是正するためのものです。ただし、パートさんが正社員の業務の一部をカバーしたり、サポート要員として目標に対する責任を負わずにフォローしたりするケースは、一般的にありうる範囲だと思います」
「また、パートの場合、残業はできないことが前提です。なので、パートに残業を依頼すること自体が、本来はイレギュラーなことです。ただし、残業自体は36協定(労使協定)さえ結んでいれば、届出の範囲内で企業が命じることは法律上可能です」
「ただし、投稿者さんが、本当に1人で2倍の業務量を任されるとしたら、よほど革新的な処理方法でも開発されない限り現実的に不可能です。逆に本当にそれが可能だとしたら、これまでの業務に相当ゆとりがあったことになります。しかし、投稿者さんは、昼食をとる時間もなかったほどですから、とてもゆとりがあったようには見えません。会社側が補充要員を出さないことが事実なら、マネジメント意識がよほど欠落しているのか、あるいはうがった見方をすれば、何らかの事情から投稿者さんが辞めるように仕向けているようにさえ見えてしまいます」
――なるほど。確かにいま金融機関は大リストラ時代に入ったといわれていますから、2人しかしかいない相談窓口を正社員の産休入りを機に切ろうとしているのかもしれませんね。
川上さん「もし辞めるように追い込んでいるとしたら、それはそれでひどいやり方をする会社だと思います。こういう精神的に追い込むようなやり方には憤りを感じます」