フリマアプリを使って「いらないモノ」を売るのは、「金銭的な利益を得ること」以外に目的があるのかもしれない。フリマアプリを利用している人の22.0%が、「3回に1回の頻度で100円以下の利益で出品している」と答えていることが、メルカリ総合研究所の調べでわかった。2019年12月11日に発表した。
マーケティングライターの牛窪恵氏は、「いまや日本のフリマアプリ利用者は、延べ3000万人以上にのぼる時代(2019年ニールセンデジタル調べ)。今回の調査で、約4人に1人が少額取引利用者であることから、単なるお金儲けとは違う価値があることがわかりました」とコメント。「売り手」の心理状態を探ってみると......。
利用目的は「不用品を処分する」がトップ
2019年5月に経済産業省がまとめた「2018年度 我が国におけるデータ駆動型社会にかかる基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、2018年のフリマアプリ市場の規模は前年比32.2%増の6392億円だった。調査開始以来3年連続で成長しており、今年10月には新規事業者が参入するなどの盛り上がりをみせている。
メルカリ総合研究所は、こうしたフリマアプリ市場の成長の背景に、「金銭的な利益以外にも多様な目的がある」との仮説を立て、515人の「100円以下の利益でフリマアプリに出品する少額取引利用者」と、「最低1000円以上の利益を見込んで商品を出品する高額取引利用者」515人の合計1030人を対象に調査した。
調査によると、フリマアプリに出品している人の4人に1人(22.0%)が、「3回に1回以上の頻度で100円以下の利益で出品している」と回答した。男性は36.7%、女性は63.3%と、女性の割合が高かった。
「フリマアプリを利用する目的」(複数回答可)を聞いたところ、少額取引利用者のトップ3は、1位が「不用品を処分する」で73.6%、2位が「捨てることがもったいない」の62.3%、3位は「お金を得る」の59.2%だった。
一方、高額取引利用者のトップ3は、1位が「不用品を処分する」で68.9%、2位は「お金を得る」で66.0%、3位が「捨てることがもったいない」で46.6%だった。高額取引利用者と比べて、少額取引利用者は「もったいない」という回答が多く、最も大きい15.7ポイントの差となっている。また、少額取引利用者は高額取引利用者に比べて、「誰かの役に立つ」は11.3ポイント、「節約、お得に買い物をする」も9.1ポイント大きい差がみられた。
出品する理由として、「捨てるのがもったいない」という人は、少額取引利用者に多いこともわかった。
承認欲求満たされ、「メルカリハイ」にハマる
また、商品が売れた時の感情を聞く(複数回答可)と、全体の74.5%が「うれしい、楽しい」と答えた。その理由として、少額利用者の63.6%が「使えるモノを捨てる罪悪感がなくなる」と答えている。これは高額利用者の39.7%と比べると、23.9ポイントもの差があった。
少額利用者の2位は「無駄なく生活ができていると感じる」の55.9%。3位が「儲かったと感じる」の52.5%だった。これは高額利用者が72.4%で、その差は19.9ポイントもあり、1位から3位まで順位が逆転した。
さらに、「フリマアプリの出品にハマっていると思うか」を聞いたところ、少額利用者の59.8%が「ハマっている」と答えた。これは高額利用者(42.5%)と比べて17.3ポイントも高かった。
また、「どのようなことで自己の承認欲求が満たされると感じるか」を聞くと、「フリマアプリで出品した商品が売れること」が70.3%、「SNS投稿にコメントが入ること」は55.7%と、14.6ポイントの差があった。「フリマアプリで出品した商品が売れること」のほうが、「SNSにコメントが入ること」よりも承認欲求が満たされるという結果となった。
フリマアプリの利用後の意識や行動の変化を聞いたところ、「売れるモノを探すようになった」が53.3%、「売ることが楽しくなった」は48.8%だった。
マーケティングライターの牛窪恵氏は、「少額利用者は高額取引利用者より『捨てることがもったいない』という意識も約2割高く、サステナビリティ、SDGs(持続可能開発目標)などの志向を持った、環境意識が高い消費者なのかもしれません。
一方、出品した利用者の7割以上が『承認欲求が満たされる』と感じ、SNSでコメントされるより、高い充足感を得ていることもわかりました。また、5割以上の男女が、フリマアプリ利用後に『身の回りで売れるものを探すようになった』と答えており、自己承認を得られたことでハイになって、いつの間にかモノをやり取りする喜びにハマっていく様子が見てとれます」と分析している。
なお、調査は2019年11月13~22日、インターネットで実施した。