同じ加州でも農民は210万円、保育所職員は250万円
ところで、日本経済新聞の記事がサンフランシスコの「低所得者の基準」と、日本の平均年収を比較したことには批判と疑問の声が殺到した。
「シリコンバレーを抱えるサンフランシスコは極端な例だ。世界中から優秀なエンジニアが集まり、20代若手でも年収10万ドル(1100万円)以上は珍しくない。不動産価格を中心に物価も跳ね上がっているから、家族4人世帯年収1400万円程度では余裕のある暮らしはできないのかもしれない」
「サンフランシスコは全米一リッチな街。地域で比較するなら、日本全体ではなく、東京都港区の人たちの年収と比べるべきでしょう」
といった声に代表される。
じつは、「サンフランシスコでは年収1400万円は低所得」という基準に着目したのは日本経済新聞が初めてではない。英国民にとっても驚きだったようで、BBC放送が2018年7月20日付日本語オンライン版「年収1300万円でも『低所得』 米サンフランシスコの実情」で、次のように報道している。
「サンフランシスコでは年収が11万7400ドル(約1300万円)の家庭が『低所得層』に分類される。なぜこんなことがあり得るのか。ITなどテクノロジー分野の中心地になり、好景気のけん引役となるなか、多くの高所得者が同市に住むようになった。都市部に住む正社員の年収は2008年から16年にかけて26%増加し、2016年には年収の中央値が6万3000ドル(約710万円)に達した。......それにつれて、地価も高騰した」
というのだ。
ただし、米国全土を見ると、4人家族の3分の2近くの年収がサンフランシスコで「低所得」とされる11万7400ドル以下だ。また、米国人の12%の年収が「貧困水準」といわれる2万5100ドル(約274万円)を下回っている。さらに、サンフランシスコと同じカリフォルニア州の農業従事者の平均年収が1万8500ドル(約210万円)、保育所職員が2万2300ドル(約250万円)であると指摘されている。
やはり、日本経済新聞は、非常に特別な地域の年収と日本全体を比較したようだ。