日本経済新聞の「年収1400万円は低所得」というショッキングな見出しの記事が話題になっている。日本では賃金や物価が上がらない負の連鎖が深刻になり、どんどん貧乏になっているという警鐘を鳴らす記事だ。
米国サンフランシスコでの話だが、この1400万円に比べて日本では世帯平均年収は約550万円。カチンときた読者が多いが、「そのとおり」と共感する人も。ネットでの賛否の声を見ると――。
新興国の憧れの「出稼ぎ先」が今や人材流出国に
話題になっているのは、日本経済新聞オンライン版(2019年12月12日付)に載った「 『年収1400万円は低所得』人材流出、高まるリスク 安いニッポン(下)」という記事だ=下の写真参照。
12月10日付から始まった1面企画「安いニッポン」の3回目。この企画は「モノやサービス、賃金など日本の価格が安いことが鮮明になった」として、日本経済の凋落を告発するシリーズだ。3回目では、かつて新興国の人々が「出稼ぎ先」として憧れた日本が地盤沈下。2007年の年収を100とすると、2017年には日本99と微減だが、ベトナム145、中国・上海176、タイ210と軒並み急成長して日本だけが一人負けの状態。
また、この記事を取り上げたテレビ朝日「モーニングショー」(12月16日放送)の調査でも、OECD加盟国の実質賃金の変化を見ても、1997年を100とした場合、2016年にはスウェーデン138.4、オーストラリア131.8、フランス126.4、イギリス125.3、デンマーク123.4、ドイツ116.3、アメリカ115.3とみな増加しているのに、日本だけが89.7と減っている。「どんどん貧乏になっている」というわけだ。
いまや、日本の優秀な人材が海外に出稼ぎに行く時代になったという。そして、読者にショックを与えたのが、次の記述だった。
「米住宅都市開発省の調査では、サンフランシスコでは年収1400万円の4人家族を『低所得者』に分類した。厚生労働省によると、日本の2017年の世帯年収の平均は約550万円、1000万円を超える世帯は10%強に過ぎない」
つまり、もはや日本人のほとんどが米国では「貧困層」に入るほど落ちぶれてしまったといわんばかりの論調だった。ただし、「年収1400万円は低所得」という強烈な主見出しは、新聞紙面では中見出しの一つで、紙面の主見出しは「香港なら2倍稼げる」だった。