「職場の雰囲気」はよくなっている!?
5年間に子どもが生まれた夫婦で、妻が出産前の会社と同じ会社に勤めている(同一就業継続)状況を見ると、妻の就業形態で利用可能な育児休業制度が「制度あり」が80.4%、「制度なし」が14.3%と出産後の「同一就業継続」の割合が圧倒的に高い。
このことからも、共働き夫婦が子どもを持ち、妻が継続して出産前の会社に勤めるためには、育児休業制度の有無が重要な役割を果たしていることが明らかになっている。
ただ、育児休業制度の利用にはキーワードがある。「職場の雰囲気」だ。5年間に子どもが生まれた夫婦で、妻が出産前の会社と同じ会社に勤めている(同一就業の継続)ケースでは、育児休業制度の利用にあたっての職場の雰囲気を「利用しやすい雰囲気がある」と感じていた人の84.4%が、また「利用しにくい雰囲気がある」と感じていた人の73.7%が同じ会社に就業し続けており、「利用しやすい雰囲気」が重要なことがわかる。
ちなみに、「制度がない」では同一就業継続は14.3%でしかない。
もちろん育児休業制度の利用には、企業側の努力や同じ職場、上司などの理解も必要になる。2002年と2012年の「職場の雰囲気」についての調査では、「利用しやすい雰囲気がある」が56.3%から69.6%に向上している。
一つひとつの職場を見れば、「上司の理解がない」「子どもをもつ女性ともたない女性との関係が冷めている」などと、そんな声も聞こえてくるが、だからといって制度が進んでいないわけではない。
こうしたアンケート調査は、「その時点」における意識調査が基本になっているものがほとんどで、その後、意識の変化などを時系列に追跡調査しているものは少ない。それだけに、この「21世紀成年者縦断調査」は貴重な調査だと言えよう。この調査は少子化対策のために行われていることを考えれば、なおさらだ。追跡調査の必要性はここにある。
「21世紀成年者縦断調査」が現在の出産適齢期の人たちの考え方を理解し、出産、子育てに対する支援を行う上での参考となり、少子化対策の一助となることを期待したい。(鷲尾香一)