トヨタやGMの2倍も人が余っているから遊べる
では、どうして蔚山工場では、このような怠慢が許されるのか。社説はこう分析する。
「蔚山工場では、作業員がベルトコンベアの動く前で5~6台の自動車を一気に組み立てることで時間をつくり、余った時間にスマホで動画を見ている。ベルトコンベアのスピードが遅く、余剰人員が多いため可能になるのだ。同工場で車1台の組み立てに必要な作業時間は28時間で、これはトヨタやGMなどに比べて11~25%も長い。100人でできることを200人で行いながら、給与は世界最高水準だ。作業員の平均年収は9000万ウォン(約820万円)で、トヨタやフォルクスワーゲンよりはるかに高い」
「それでも強大な労働組合が『給与をもっとくれ』と、ストを毎年行ってきた。今では『車を組み立てながら映画を見ることも邪魔するな』と言っている。組合は、職業人として最低限の基本は守るべきだ。多くの国民はそれでも国産車であることを理由に現代自動車を利用するが、スマホで動画を見ながら組み立てられた車に乗りたいとは考えないだろう」
と、社説は結んでいる。
そもそも、今回の騒動はどうして起きたのか――。この問題を追いかけきた朝鮮日報(12月11日・12日付)によると、まず現代自動車の生産現場では何が起きていたのか、その実態をルポした同紙は、こう報告する。
「『スマホでサッカーを見ていて、ベルトコンベアで車体がやってくると素早く作業し、またサッカーを見始めていた』。最近、蔚山工場を訪問した政界関係者は本紙の取材に対し、『10人いれば10人までが遊びながら働いていた。作業台にスマホやタブレット端末を置き、映画やユーチューブなどさまざまな動画を見ていた。外部の人の前でもお構いなしの様子に驚いた』と語った」
「こうしたたるんだ作業が可能なのは、作業員が余っているからだ。蔚山工場の人員編成効率は55%で、100人分の作業を約200人でやっている計算だ。同じ現代自動車でも米国、インド、チェコ、トルコなど海外工場での編成効率は90%を超える。100人分の仕事を110人がやる計算だ。西江大学のキム・ヨンジン教授は『動画を見ながら作業する工場がこの世のどこにあるのか。現代自動車の国内工場は世界のどこにもない"おかしな工場"だ』と指摘した」