韓国最大の自動車メーカーの工場では、従業員がスマホの動画を見ながら自動車を組み立てているそうだ。
何とかやめさせようと、会社側がWi-Fiを遮断すると、労働組合が猛反発。結局会社は、スマホ禁止の断念に追い込まれた。
左派の文在寅(ムン・ジェイン)政権になってから、労働組合の暴走が目立つ韓国だが、さすがに今回の事態は驚きの目で見られている。韓国紙から読み解くと――。
労組は「スト」をチラつかして会社に対抗
現代(ヒュンダイ)自動車といえば、韓国最大手の自動車メーカーだ。傘下に起亜(キア)自動車があり、現代自動車グループを構成している。グループ全体の販売台数は2018年時点で、年間740万台で世界第5位だ。
現代自動車が韓国蔚山(ウルサン)で稼働させている自動車製造工場は、年間160万台の生産能力を持ち、1工場としては世界最大規模を誇る。その蔚山工場では、従業員がスマホの動画を見ながら自動車を作っているという。会社側がそれをやめさせようとしたら、労働組合の強い抵抗にあい、断念せざるを得なくなった。
そんな呆れた実態を、朝鮮日報(2019年12月12日付)の社説「映画を見ながら組み立て作業、国民はこんな車に乗らなければならないのか」が、こう嘆いている。
「現代自動車の生産ラインで作業員たちがスマホを使って野球やサッカーなどのスポーツ、さらには映画などを見ながら組み立て作業を行っていたため、会社側が安全確保を理由に作業時間中のWi-Fiを遮断することにした。
しかし労働組合の激しい反発を受け措置を撤回した。組合は『弾圧』などと主張して非難声明を出したうえに、土曜日の特別勤務を拒否したため、会社側が譲歩したのだ」
朝鮮日報社説は「これほどまでに勤務態度がひどく安全意識が低い工場は、海外はもちろん、労働組合が非常に強い韓国国内でも見られないだろう」として、他社の例をあげる。
韓国GM(ゼネラルモーターズ)ではスマホの使用自体が禁止されており、ルノー・サムスンや双竜(サンヨン)自動車でも作業員は自らスマホ使用を自制している。同じ現代自動車でも、米国工場では作業員がスマホを個人の保管箱にしまってから作業場に入るのだ。