「自己主張が強い」「日本の常識が通用しない」......。
どんどん外国人労働者が増えるなか、外国人を部下に持つケースも多くなっているが、上司の2割以上が「今すぐにでも辞めたいくらいだ」と大きなストレスを抱えていることがわかった。
総合人材サービスのパーソルグループのシンクタンク、パーソル総合研究所が2019年12月10日に発表した「外国人部下を持つ日本人上司の意識・実態調査」から、会社に外国人をマネジメントするノウハウがなく、ひとりで悩む上司像が浮かんでくる。
「自己主張が強い」「日本の常識が通用しない」
まず、外国人部下に対するマネジメントの困難さについて聞くと(複数回答)、「ノウハウがなく手探り状態である」と答えた人が30.0%いた=図表1。また、「通常業務が忙しく、外国人材のマネジメントに手が回らない」が24.7%、「外国人材をうまくマネジメントできていない」が22.8%と、どう扱ったらいいか、対応に困っている実態が明らかになった。
実際に外国人が部下に来た場合、受け入れショック(ネガティブな想定外)を感じる上司が多くいることが判明した。部下に感じたギャップ(複数回答)の1位が「自己主張が強い」(46.1%)、以下「日本の常識が通じない」(41.6%)、「昇給の要求が強い」(40.7%)、「組織への忠誠心が低い」(40.1%)、「仕事を教えるのに時間がかかる」(40.0%)と続く。
さらに、「仕事内容に対するこだわりが強く、指示したことをやってくれない」(38.4%)、「評価に対する不満が強い」(37.3%)、「コミュニケーションが困難」(35.7%)などと自尊心の強さでマネジメントが難しくなることが多いようだ。
つまり、これまでの日本人部下に対するやり方が通用せず、職場のルールや慣例を守って成果を出してほしいと願っても、期待どおりにいかないのだ。
会社の支援がゼロのまま1人で向き合う人が半数
一方、外国人材の受け入れについて、「会社から何らかのサポートを受けているか」と聞くと(複数回答)、「受け入れについての指導・説明があった」が最多で26.5%だった。次いで「人事部による定期的なヒアリング・面談」(25.0%)、「受け入れについての研修」(21.1%)、「マネジメントについて相談できる窓口の設置」(20.6%)などが続く。しかし、これらのサポートがなく、「いずれのサポートも受けていない」と答えた人が46.1%もいた。
約半数の上司が、会社からの支援がまったくないまま、外国人部下と向き合っているのだった。このため、「強いストレスを感じる」という人が39.1%(部下がパート・アルバイト)もおり、「できれば今すぐにでも会社を辞めたい」と答えた人(同)が2割以上の22.5%もいた=図表2。
今回の調査について、パーソル総合研究所主任研究員の小林祐児さんはこう説明している。
「日本上司の多くが、実際に外国人部下を持ったとき、想定以上の難しさを感じています。ノウハウもない中で、外国人に対して『こちら(職場)に合わせてほしい』という意識が強い上司ほど、受け入れ時のギャップが大きくなります。コミュニケーションの苦労、トラブルが生じている職場では、外国人材が定着しないばかりか、日本人上司も疲弊して離職する人も多くいます。それなのに、上司に対する会社からの組織的サポートは手薄です」
「必要なのは、外国人材のマネジメントを『現場任せ』『上司任せ』にせず、企業としてノウハウを可視化して、蓄積・共有していくことです。経験が浅い日本人上司には、業務支援ツールやマニュアルはもちろん、受け入れギャップを防ぐことを含めた意識面の準備や研修が必須でしょう」