欧米に比べて共稼ぎの子育て環境は遅れている
幼児教育の段階的無償化の取り組みは、2014年からスタートしたが、生活保護世帯や市町村民税非課税世帯(年収約270万円まで)などの低所得世帯が対象となっていた。その後、冒頭の子ども・子育て関連3法が整備されたことで、今年10月1日から3~5歳児(0~2歳児は一部条件付き)で無償化がスタートするに至った。
夫婦共働き世帯が増加する中で、幼稚園などの利用料金が無償化されても、共働きが継続できる条件の一つである「預かり保育」が大きな問題だろう。
「預かり保育」は幼稚園や認定こども園の正規の保育時間終了後に、延長で預かる仕組みのことだが、厚労省の2016年幼児教育実態調査によると、同年6月1日現在の幼稚園における預かり保育の実施状況は、幼稚園全体の85.2%にあたる8901園(公立幼稚園の66.0%にあたる2549園、私立の96.5%にあたる6352園)が実施している。
ただし、預かり保育には、「保護者の就労等」「兄弟の学校行事等」「近親者の介護等」といった条件を設定している幼稚園が、公立の場合には59.6%、私立の場合には27.2%、全体では36.5%ある。また、ほとんど幼稚園では預かり保育に対して別途料金が発生する。その内訳は以下のとおりとなっている。
<預かり保育における料金> 公立:2,549園、私立:6,352園、合計:8,901園
公立 私立 合計
保育料・実費ともに徴収 992(38.2%) 1.517(24.7%) 2,563(28.8%)
保育料のみ徴収 1,112(43.6%) 3,817(60.1%) 4,929(55.4%)
実費のみ徴収 159( 6.2%) 810(12.8%) 969(10.9%)
保育料・実費ともに不徴収 286(11.2%) 154( 2.4%) 440( 4.9%)
さらに、預かり保育が利用できても、「何時まで預かってくれるのか」という大きな問題が残る。以下に幼稚園の公立、私立別、時間帯別の預かり保育の終了時間を掲載した。
<預かり保育の終了時間> 公立:2,266園、私立:6,285園、合計:8,551園
公立 私立 合計
午後3時以前 160( 7.1%) 52( 0.8%) 212( 2.5%)
午後3~4時 506(22.3%) 193( 3.1%) 699( 8.2%)
午後4~5時 653(28.8%) 1,135(18.1%) 1,788(20.9%)
午後5~6時 616(27.2%) 3,063(48.7%) 6,679(43.0%)
午後6~7時 317(14.0%) 1,761(28.0%) 2,078(24.3%)
午後7時を超える 8( 0.4%) 68( 1.1%) 76( 0.9%)
預かり保育の終了時間では、公立の場合には「午後5時」が最も多く、私立の場合には「午後6時」が半数(48.7%)を占めている。「午後7時」を超えた預かり保育を行っているのは公立ではわずかに0.4%、私立でも1.1%しかなく、欧米に比べれば、まだまだ共働きをしながら子育てをする環境が整ったとは言い難い状況だ。
なお一層、預かり保育を実施する幼稚園などが増加し、預かり保育終了時間も延長されることが望まれる。こうした施策が功を奏して、子どもの増加につながることを期待したい。(鷲尾香一)