「行きたい」「行こう」と思える地域に! 観光振興のカギはブランド化

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「地名」と「ブランド」の違い

   著者の岩崎邦彦さんは、静岡県立大学経営情報学部教授で、主な研究テーマは地域に関するマーケティング問題。学長補佐と地域経営研究センター長を兼ねる。

   国民金融公庫、東京都庁、長崎大学経済学部助教授など経て現職に就いた。近年、主な各地での地域振興は、観光への依存を強めており、それも頼みはインバウンド需要だ。岩崎さんは、それが過度になると危険でもあり、持続可能な観光発展のため、ブランド重視の提案を企図したものだ。

   消費者調査で「興味深い結果」に出合ったと岩崎さんは述べ、そのことがブランドつくりのヒントになるのではないかという。

   興味深い結果というのは、たとえば、「『長野県』には行きたいと思わないが、同県の『軽井沢』には行きたい人がいる」こと、「『栃木県』には行きたいと思わないが同県の『日光』には行きたい人がいる」こと、「『岐阜県』には行きたいと思わないが、同県の『飛騨高山』には行きたい人がいる」―などだ。「明らかに論理的矛盾がある」と著者。

   「おそらく、長野県、栃木県、岐阜県は『地名』だ。一方、軽井沢、日光、飛騨高山は、地名を超えた『ブランド』である」ために表れるねじれた現象なのだという。インターネットの検索サイトで画像検索をすると、軽井沢、日光、飛騨高山のブランドの検索では、その地域ならではの風景が上位に表示される。「地域らしさがあり、ハーモニーを感じる。検索結果の画像を見るだけで、どの地域か分かる人も多いはず」という。

   一方、長野県、栃木県、岐阜県の画像はというと、上位に表示されるのはいずれもほとんどが地図。軽井沢、日光、飛騨高山の検索結果との違いは、「地名」と「ブランド」の違いを示唆する結果のようだ。

   調査結果によると、消費者が観光に出かけるとき、地域か宿泊施設か、どちらを先に選ぶか問うと、8割が地域を選択。つまり、地域の引力が、その地域のホテルや旅館などの集客力に直結するということ。逆に、設備の素晴らしさで一つのホテルが客を引きつけることができでも、地域そのものに魅力がなければ、地域は元気にならない。「地域振興とホテル新興はイコールではない。観光客に選ばれ、地域が元気になるためにはまず、『地域引力』を生み出すことが不可欠」なのだ。

   「観光」がテーマではあるが、顧客獲得を目指すビジネスなら異業種でも参考になりそうな「教科書」だ。

「地域引力を生み出す 観光ブランドの教科書」
岩崎邦彦著
日本経済新聞出版社
税別1600円

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