AIに仕事を奪われないための切り札は「読解力」! OECD調査で世界15位に下落、それを止める策は?

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   AI(人工知能)はこの数年来著しい成長を遂げている。AI開発の目的の一つは、人間の仕事の肩代わりだが、人間にとっては、いよいよ、AIに仕事を奪われないためにはどうすればいいのかを真剣に考えねばならない時がやってくる。

   じつはAIは読解力で決定的な弱点を抱えており、理解やコミュケーションを前提とすることが苦手。だから、人間は読解力を磨く必要があるのだが、あろうことか、現代人の読む力も非常に衰えていることがわかった。この問題の解決が、本書「AIに負けない子どもを育てる」のテーマだ。

「AIに負けない子どもを育てる」(新井紀子著)東洋経済新報社
  •  AIに仕事を代替されないために……
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AIの東大合格から目標転換

   同じ著者によるベストセラー「AI vs.教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社、2018年2月刊)の続編。著者の新井紀子さんは、2011年に始まった官民共同のAIプロジェクト「ロボットは東大(東京大学)に入れるか」のプロジェクトリーダーを務めたAIのエキスパートだ。

   このプロジェクトで「東ロボくん」と呼ばれたAIは、国公立を含む7割の大学に合格可能性80%以上という力をつけたが、十分な文章の読解力を備えることができず、16年に東大受験を断念。東ロボくんは、辞書や教科書、過去の入試問題などから蓄積したキーワードを頼りにした対応しかできないため、記述式の東大入試には歯が立たないと判断された。

   新井さんらは、AIプロジェクトに関連して、読解力を測るための「リーディングスキルテスト(RST)」を開発。「事実について書かれた短文を正確に読むスキル」を測るよう設計されたテストで「係り受け解析」や「同義文判定」など6分野がある。中学生程度の学力なら容易に解けそうな内容なのだが、AIとの比較のため、実際に中学生や高校生らに試してもらうと、読解力が不足している子どもたちの割合が非常に多いことがわかった。RSTの調査を進めていくと、子どもばかりか、大人でも文章を正確に理解できないていない状況があることも明らかになってきた。

   RSTの問題はたとえば、こうだ。

―― 次の2文は同じ意味でしょうか?

(1)幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
(2)1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

   「同義文判定」の問題。答えはもちろん「異なる」だが、中学生の正答率は57%どまり。そのことを、ある自治体の教育委員会で話すと「多くの委員が『信じられない』という顔をした」ものだ。ある高校で、国語の定期試験に同じ出題をしたところ、なぜ「異なる」のかを質問する生徒が少なからずいたという。

   RST開発の動機の一つは「読解力をめぐる人間のAIに対する優位性を示そうとした」ことだったが「逆に、人間の読めなさ加減を白日の下に晒すこと」になり、「皮肉なこと」と新井さんは言う。

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