「運」とは、なんでしょうか?
辞書や広辞苑では「天命」「めぐってくる吉凶の現象」と記されています。宗教家で元参議院議員(二期)の常岡一郎は、運を高める方法として、
「仕事に全力をしぼる」
「明るく感心のけいこをする」
「いやなことでも、心のにごりをすてて喜んで引き受ける」
の三つを紹介しています。
これは、「仕事の姿勢が運命になること」「あらゆることはけいこをしないと身につかないこと」「不平不満を持ってやっていても身にならない」ことの解釈です。
「わたしたちは、いつだって好きなことをして生きていける。」(直島美佳著)サンマーク出版
「人の成功を喜ぶ」ことの本当の意味
本書は、いわゆる自己啓発書に含まれます。その多くは聞いたことがあるようなフレーズですが、筆者が共感した部分を紹介したいと思います。
きれいごとや理想論では物事は解決しません。ネガティブやブラックな感情を、上手に操らなくてはいけません。
友達関係、恋愛関係、親子関係、多くの人が悩んでいるのは、人間関係ではないでしょうか。じつは、「人から100パーセント好かれる方法」があると、著者の直島美佳さんは解説します。それは、人のうれしいニュースを聞いたら「全力で喜ぶこと」だそうです。それも少々大げさなくらいがいいと。
「わたしがすごく落ち込んだとき、あなたは『心配しているよ』と言ってくれるかもしれません。でも、予定を全部キャンセルして、わたしと同じくらい泣いてくれないでしょう? 『心配しているよ』って、さっき言ってくれた人が、『わー、ここのランチ最高』なんて、SNSに投稿していたら。その人のことを嫌いになってしまいますよね?」
と、直島さんは言います。
筆者が20代の頃の出来事になります。当時はコンサルテイング会社に勤務をしていました。社長に歯向かったら、理不尽な目標設定だけが残されていました。
社長「他の連中は目標設定終わったから。お前の目標は残り全部だから!」
尾藤「えっ!お前の目標は残り全部ってどういうことですか?」
社長「全部、新規で開拓すればいいじゃん。簡単でしょ?」
とりあえず1年頑張ってダメだったらと、腹を括るつもりでした。他の社員も気まずそうです。そこで考えました。誰かが売り上げを挙げたら喜ぼうと。
8か月目にようやく案件を受託できました。その案件は、事業部利益50%をタタキ出すほどの大型案件に育ちます。気がついたら、コンサル会社世界1位(50か国)の達成率を計上していました。
社内で味方はどうやってつくるのか、上司とはどうやって握るのか。この経験は、それ以降の、マネジメントに大きな影響を与える出来事になります。
「運」のいい悪いは自分で決める
私たちが暮らしている日本は、恵まれた国でありながら、心が貧しくなってきています。情報があふれて、ハウツー本もあふれています。自分探しに振り回されて、迷子になって、はぐれてしまっている人もいるかもしれません。
「運」がいい、悪いも自分の受け取り方次第です。不安に陥ることもあるし、調子がよくても知らず知らずのうちに心が緩んでしまうこともあります。自分の人生は、自分にしか決められません。そんなあたりまえのこと、頭では充分すぎるくらいわかっていたって、ときにブレてしまうのも人間というものです。
パッと見た目が華やかな人がいたとします。しかし、華やかに輝いている人にも、大なり小なりアクシデントがあるものです。人間はみんな同じです。自分の「運」を光の方向に導けるのは、結局は自分しかないということでしょう。
「運」はどんな人にも平等にあります。大切なのはその「運」にどう気づき、活かしていくかということではないでしょうか。(尾藤克之)