日本製品の不買運動が収まらない韓国で、日本を代表する2つの企業が明暗を分けている。
度重なるバッシングを受けて何度も苦境に立たされたカジュアルウエアブランドのユニクロがようやく反転攻勢の兆しを迎えた。
一方、日韓対立が起こる前は、韓国の輸入ビール業界では不動の1位を誇っていたアサヒが、ついに人員削減に追い込まれた。いったい何が起こっているのか。韓国紙で読み解くと――。
ユニクロ、非難浴びながらも「おまけ下着セール」成功
ユニクロに持ち直しの兆しが表れたことを、朝鮮日報(2019年11月28日付)「ユニクロ、『おまけ下着』贈呈した6日間の売上が9月1か月分を上回る 前年比では大幅減少も最近3か月の売上は上昇傾向」が、皮肉をまじえてこう伝えている。
「下着無料プレゼントでヒートテックを10万枚贈呈し『ずる賢いマーケティング』と物議を醸したユニクロの売り上げが、依然として不振であることが分かった。しかし最近3か月の売り上げは上昇しており、不買運動が落ち着いたのではないかとの見方も示されている」
ユニクロは11月下旬、1つでも製品を買った客にヒートテックを無料で贈呈する大出血セールを6日間行った。その売り上げは約95億ウォン(約8億8100万円)で、不買運動がピークに達していた9月1か月間の売り上げを4億ウォン(約3700万円)も上回ったのだった。
ユニクロは売り上げを公開していないのに、なぜそんな数字がわかるかというと、与党「共に民主党」のパク・クァンオン議員が、国政調査権を使ってヒートテック無料贈呈期間中の国内カード会社8社のクレジットカード売り上げ状況を分析したからだ。パク議員は、与党内のユニクロ問題追及チームの一員で、いわば「ユニクロ・ウォッチャー」として、これまでも何度も同様の調査を行ってはメディアにユニクロ情報を提供してきた。
その結果、ユニクロの最近3か月間の月別カード売上高は、9月(約8億4400万円、前年同月比67%減)、10月(約18億1800万円、66.7%減)、11月1日~20日(約19億1100万円、63.5%減)で、いずれも前年に比べ60%以上減少した。しかし、減少幅は減っており、直前の月に比べれば売り上げが上昇傾向にあることがわかる。「不買運動が下火になっている」とパク議員は残念そうに指摘するのだった。
朝鮮日報はこう説明する。
「割引セールの期間、ユニクロの店舗にはヒートテックをもらおうと人々が殺到した。一部店舗では、開店と同時に景品を手に入れようとする人々が長い列を作った。流通業界のある関係者は『おまけ下着の贈呈に対する非難の世論が大きかったが、それだけ宣伝効果もあった。年末を前に、コスパを追求する消費者が割引イベントに反応し、不買運動も少しずつ収まる兆しを見せている』と話した」
アサヒ、価格30%下げ大出血セールも焼け石に水
一方、ビール業界は日本財務省の貿易統計で10月、韓国向けビールの輸出が「ゼロ」になったという衝撃的な数字が発表されたばかりだ。それに追い打ちをかけるニュースが飛び込んできた。ついに現地法人が人員削減に追い込まれたのだ。
中央日報(2019年12月4日付)「日本ビール不買運動で...ロッテアサヒ、契約職の営業社員削減へ」がこう伝えている。
「不買運動により韓国国内で日本産ビールが売れない中、アサヒビールの流通会社ロッテアサヒ酒類が人員削減に入った。ロッテアサヒ酒類の関係者は12月3日、『年末に勤労契約期間が満了する契約職の営業社員に対して11月末、契約延長不可の方針を通知した。追加の削減などの計画はまだ決まっていない』と述べた」
「ロッテアサヒ酒類は今回の決定の背景を明らかにしなかったが、酒類業界ではアサヒビールの売り上げ急減によるリストラと受け止めている。アサヒビールは今年中旬まで輸入ビール市場でシェア1位だったが、今年7月に始まった日本商品不買運動のターゲットになり、売り上げが急速に減少した」
ロッテアサヒ酒類は11月、コンビニ納品価格を最大30%も引き下げるという大出血セールを行ったが、焼け石に水だったのだ。
(福田和郎)