日本の生命保険市場は米国に次ぐ世界2位の規模で、約40兆円(生命保険協会)と言われています。しかし、各社によるシェアの奪い合いは激しさを増しています。ノルマクリアが最優先になり白板上の数字が欲しい人が多いので注意する必要があります。
あなたは保険の実態について、どこまで理解していますか。
「私たちが保険営業を嫌うワケ ~だから保険屋さんがイヤなんです~」(下澤純子著)ファストブック
「営業特攻隊」の担当者はとっくに辞めている
皆さんは「保険」の営業について、どのような印象をお持ちですか――。
筆者の知人で、本体が軽自動車で、オプションを数百万円もつけているような保険に加入している人がいます。こちらは損害保険の事例ですが、「保険」の営業には親戚や知人・友人、会社の上司や、会社の株主が保険会社だったり、仕事上のお付き合いだったりと、なかなか断れないケースがあるようです。
一方、法人営業は社員研修が脆弱なところが少なくありません。充分な研修も受けないまま、1日に20~30件の飛込み営業をやらされます。激務で、かなりのハードワークを強いられるとのことがあります。
著者の下澤純子さんは、その特徴をこう指摘します。
「社内では『営業特攻隊』と命名されています。体質は体育会系で、イケイケ・ドンドン。飛込みの際に渡す冊子を20~30冊持ち歩くのでカバンがパンパンです。また、終日歩くのでヒールは履けません。スーツにスニーカーが標準です。スーツにスニーカーの人がいたら保険営業かも知れません。また、リストと言っても、商店やマンションの一室のようなところがほとんどです」
まれに、飛込み先で「長年退職金の積み立てをしていたものが、すべて掛け捨てだった」ことが判明することがあります。担当者はとっくに辞めています。生命保険に加入している人の多くは保障内容を理解できていないと、下澤さんは警鐘を鳴らします。
契約者は内容を理解できていないものに対して、安くない保険料を支払っているリスクがあるのです。
支社でよくある出来事とは......
これは保険会社の支社での、よくある出来事です。フィクションでイメージしてみます。
中途入社の今村君(仮名)が入社3か月目にして、ようやく売り上げをあげました。売ってきたのは「貯蓄型の個人年金保険」。支社長も褒めてくれるに違いないと、今村君は思いましたが、支社長の評価は厳しいものでした。
「なんだ、この商品は。掛け捨ての商品(定期保険)をなぜ売らない!」。今村君は次のように答えます。「年金で不足する老後資金を支えるためにも必要だと思います」。支社長は「はあ? お前は給料泥棒か! 死亡保険金、最低3000万円持って来い!」。
そしてメンバー全員を集めました。
「いいか、お前たち! ピンチはチャンスだ! 苦しいときほど笑顔だ! 途中で諦めるな! 夢にときめけ! 明日にきらめけ!」
夕焼け番長さながら、青春漫画のようなセリフを繰り返すだけでした。今村君のモチベーションは急速に下がっていきます。
保険の営業は数字で評価が決定されるので、売り上げにシビアです。現場では、慢性的な人員不足で人が足りません。そのため、求める人物像や採用要件が不明瞭です。上司になる人も、数合わせで採用されている場合は、知識や実績が乏しいことが多いのです。
トラブルを避けるためにも保障内容を理解しておきましょう。また、将来のライフプランにあわせて適宜保険内容のチェックもしなければいけません。
本書は、生命保険業界を知り尽くした下澤さんが解説する実践書です。過酷な営業ノルマで厳しいとも言われる保険営業の「選ばれるヒント」が見つかるかもしれません。(尾藤克之)