そんなにミシュランはスゴイのか?「すきやばし次郎事件」に世界が騒然となったワケ

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   いやあ、とにかく驚きました。あの「次郎さん」がこんなに有名だったとは! このたび発表された「ミシュランガイド東京 2020」から「すきやばし次郎」が消えたニュースを、世界中のメディアが速報で報じたのです!

   古いビルの地下にある、たった10席ほどの小さな寿司店になぜ、これほど注目が集まるのか――。世界のグルメ界では、ミシュラン格付けをめぐる熾烈なドラマが話題になっていました。

  • ミシュランから「すきやばし次郎」が消えた!(写真はイメージ)
    ミシュランから「すきやばし次郎」が消えた!(写真はイメージ)
  • ミシュランから「すきやばし次郎」が消えた!(写真はイメージ)

「Jiroがミシュランから消えた!」

   発刊から2019年版まで12年連続で「3つ星」だった「すきやばし次郎本店」が、「ミシュランガイド東京 2020年度版」に掲載されないことがわかりました。人気が高じて、一般予約ができなくなったことから「掲載対象外」になった(ミシュラン社)そうですが、よほど衝撃的なニュースだったのでしょう。世界中のメディアが「Jiroがミシュランから消えた!」と報じました。

Sukiyabashi Jiro is dropped by Michelin(「すきやばし次郎」がミシュランから落とされた:英BBC)

The 'world's best sushi restaurant' has been stripped of its three Michelin stars.
(世界最高の寿司店がミシュラン三つ星をはぎ取られた:英ガーディアン)

Tokyo's famous Sukiyabashi Jiro sushi restaurant removed from Michelin Guide (東京の有名な寿司店「すきやばし次郎」がミシュランガイドから削除された:米CNN)

   グーグルで「sukiyabashi jiro」と検索しただけでも、オーストラリアやアイルランドといった英語圏のメディアだけでなく、フランス語やスペイン語、イタリア語や中国語など、ありとあらゆる言語の報道が見つかりました。

   正直、日本のニュースがこんなに「秒速」で、世界で報じられることは、そう多くありません。それだけ、「すきやばし次郎」がミシュランガイドから消えたことは大きな衝撃だったようです。

   記事を読むと、「すきやばし次郎」がミシュランガイドに掲載されないのは「一般人が予約できなくなった」からで、「寿司の味が落ちた」わけでも「次郎さんの腕が落ちた」わけでもないと、「次郎さんには非がない」ことを強調する書きっぷりが目立ちます。なかには、「トロの質が落ちたり、酢飯がまずくなったりしたわけではない」と、具体的に報じた記事もありました。

「ミシュランの重圧はもうごめんだ!」

   「すきやばし次郎」が有名になったのは、2011年に全米で公開されたドキュメンタリー映画「Jiro Dreams of Sushi(次郎は寿司の夢を見る)」の影響が大きいようです。一般的に、海外では「芸術家」や「職人」を高く評価する傾向があります。生の魚に酢飯を組み合わせる「シンプルな技」を探求する小野次郎氏の「職人気質」が、人々の心を打ったのでしょう。

   さらに、オバマ前米大統領が来日した際、「すきやばし次郎」を訪れたエピソードもよく知られています。当時、「オバマ氏は寿司を半分残した」という情報も流れましたが、実際はすべて残さず食べたうえに、

「This is the best sushi I've ever had in my life」
(これまでの人生で最高の寿司だ)

と、3回も言ったそうです。

   ちなみに次郎さんいわく、「オバマ氏が一番気に入ったネタは『中トロ』だった」とか。「中トロを口にしたとたん、ウインクをしてくれた」のが、その理由だそうです。

   「すきやばし次郎」が世界的に有名であることはよくわかりましたが、なぜこれほどまでに「ホットな話題」になるのでしょうか。じつはここ数年、世界のグルメ界ではミシュランの星をめぐり、ドラマが繰り広げられていました。

   2017年には、著名なフランス人シェフがミシュランの星を辞退して話題になりました。10年以上にわたり「3つ星」を維持していたものの、「星を維持することがプレッシャー」になっていて、「重圧はもうごめんだ!」という理由でした。 

   他にも、「ランク落ちを危惧した」とされるミシュラン3つ星のスターシェフの自殺や、シェフの異動で急に「3つ星から星ゼロ」に降格された人気レストランの悲劇など、「料理業界はミシュランに翻弄されすぎている」という批判が相次いでいたのです。

   そんな中での「すきやばし次郎事件」でしたから、「また、ミシュランで何かあったのか!」と疑念を抱かせたようです。世界中のファンは、「次郎さんの腕や寿司の味とは関係ない」という報道にホッとしたのではないでしょうか?

次郎さんの寿司は「食」を超えた芸術品

   それでは、「今週のニュースな英語」は、「すきやばし次郎」に関する英語表現をご紹介します。食べ物の話題は万国共通ですし、寿司はみんなの大好物! 話のきっかけに最適な話題です。

Sukiyabashi Jiro is dropped by Michelin(「すきやばし次郎」がミシュランから消えた)
Sukiyabashi Jiro has earned three Michelin stars every year since 2007
(「すきやばし次郎」は、2007年からずっとミシュランの3つ星を獲得していた)

Jiro does not accept reservations from the general public
(「すきやばし次郎」は、一般客からの予約を受け付けていない)

Jiro can only take 10 guests at a time
(一度に10人の客しか入れない)

Ono Jiro is famous for a documentary film 'Jiro Dreams Of Sushi'
(小野次郎氏は、ドキュメンタリー映画「次郎は寿司の夢を見る」で有名だ)

Mr. Obama said it was the best sushi he'd ever had (オバマ氏は、人生で最高の寿司だったと言った)

   毎年のように繰り広げられる「ミシュラン狂騒曲」。「きっと、次郎さんの寿司の味は変わらないのだろうな」と思いつつ、1日に10人しかそれを確かめられないとは......。もう、食を超えた「芸術品」だと思うことにします。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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