「ミシュランの重圧はもうごめんだ!」
「すきやばし次郎」が有名になったのは、2011年に全米で公開されたドキュメンタリー映画「Jiro Dreams of Sushi(次郎は寿司の夢を見る)」の影響が大きいようです。一般的に、海外では「芸術家」や「職人」を高く評価する傾向があります。生の魚に酢飯を組み合わせる「シンプルな技」を探求する小野次郎氏の「職人気質」が、人々の心を打ったのでしょう。
さらに、オバマ前米大統領が来日した際、「すきやばし次郎」を訪れたエピソードもよく知られています。当時、「オバマ氏は寿司を半分残した」という情報も流れましたが、実際はすべて残さず食べたうえに、
「This is the best sushi I've ever had in my life」
(これまでの人生で最高の寿司だ)
と、3回も言ったそうです。
ちなみに次郎さんいわく、「オバマ氏が一番気に入ったネタは『中トロ』だった」とか。「中トロを口にしたとたん、ウインクをしてくれた」のが、その理由だそうです。
「すきやばし次郎」が世界的に有名であることはよくわかりましたが、なぜこれほどまでに「ホットな話題」になるのでしょうか。じつはここ数年、世界のグルメ界ではミシュランの星をめぐり、ドラマが繰り広げられていました。
2017年には、著名なフランス人シェフがミシュランの星を辞退して話題になりました。10年以上にわたり「3つ星」を維持していたものの、「星を維持することがプレッシャー」になっていて、「重圧はもうごめんだ!」という理由でした。
他にも、「ランク落ちを危惧した」とされるミシュラン3つ星のスターシェフの自殺や、シェフの異動で急に「3つ星から星ゼロ」に降格された人気レストランの悲劇など、「料理業界はミシュランに翻弄されすぎている」という批判が相次いでいたのです。
そんな中での「すきやばし次郎事件」でしたから、「また、ミシュランで何かあったのか!」と疑念を抱かせたようです。世界中のファンは、「次郎さんの腕や寿司の味とは関係ない」という報道にホッとしたのではないでしょうか?