妊婦さんが「妊娠バッジ」をつけ、周囲からいたわりの配慮を受ける試みが広がっているが、同じように生理中の女性従業員が「生理バッジ」をつけたらどうなるだろうか。
大阪の老舗百貨店が行った画期的、かつ大胆な試みがネット上でも大炎上騒ぎになっている。「うわっ、キモい」「いや、生理の理解に一石を投じた」と賛否大激論なのだ。あなたはどう思いますか?
「女性同士が、ポジティブな雰囲気で盛り上がれた」
話題のきっかけになったのは2019年11月25日に放送された日本テレビ系朝の情報番組「スッキリ」だ。
大阪市の老舗百貨店の大丸梅田店が、女性従業員が生理中であることを知らせる「生理バッジ」を試験的に導入したことを紹介した。ネット発の人気漫画で映画化も決定している「ツキイチ!生理ちゃん」(作・小山健さん)とのコラボ企画だ。名札の下にある告知用の札を裏返すと生理中であることを知らせる「生理ちゃん」の漫画が現れる仕組みで、女性従業員約500人が任意でバッジを付けている。もちろん任意だから、付ける、付けないは本人の自由だ。
「スッキリ」の取材に応じた今津貴博店長によると、導入のきっかけは11月22日、「女性のリズムに寄り添う新ゾーン」として5階にオープンした最新の生理用品などを扱う売り場だ。「生理に対する理解を深めたい」と、若手女性社員から提案され、このフロアで働く女性従業員に生理バッチを提供した。
今津店長は、
「妊娠マークがあるように、生理マークを付けることによって従業員同士の気遣いとか、ポジティブな動きが出てくるのではないか。売り場としてもいい形に進んでいくのではないか考えました」
と語る。
女性従業員たちからも、
「生理の話を職場の人とできるようになったことが大きな一歩だと思う」
「同性同士で話すことで、ポジティブな雰囲気で盛り上がれた」
とおおむね賛同の意見が多いという。大丸側は今後、お客さんの反応などを見て継続するかどうか検討する予定だ。
スッキリが街頭で調査をした女性80人中では、賛成が31人、反対が49人。およそ4割が賛成だった。番組に出演した生理用品の社会史を研究している田中ひかるさんはこう評価した。
「試験的な導入ということで、結局廃止になってしまうかもしれないけれど、生理を語る議論を起こすために一石を投じた意義はあると思う」
「お客様にまで『生理中です』って知らせてどうするの?」
この番組は働く女性たちに大きな反響を呼んだ。ネット上では、ハッシュタグをつけた「#生理バッジ」のスレッドが立ち、賛否激論が交わされている。
まず、賛成の意見では、こんな声があった。
「生理バッジのアイデアが世に出なければ、生理休暇や生理を取り巻く環境についてメディアが取り上げたり、皆がこんなにも考えたり意見をかわしたりする機会はなかっただろうから、生理バッジの功績は絶大だな」
「番組では、40代女性が『私たちの時代は我慢した。今の若い人は甘えている』と冷たく言い放っていた。実際、男の方は痛みを理解できない分、グダグダ言ってこないよね。言ってくるのは女の方。私は生理中に失神したことあるくらいひどいほうだから、バッジで理解していただけると嬉しい」
「生理用品を買った時ですら、別の透けない袋に入れるぐらいの繊細なメンタリティーのことなので、生理バッジが普及するとは思えません。それでも、生理のしんどさを皆で考えようねという流れのきっかけになってきたのは良いことだと思います。」
「生理がつらくてもすでに頑張って出勤しているわけだから、職場でつける意味がよくわからないけど、電車の中ではつけたいかも。つらくて優先席に座っているとき、肩身の狭い思いをしなくてすみそう」
しかし、大半の人が反対派だ。「うわっ、ギョッとする」という嫌悪感と、「プライバシーの侵害」という理由が多い。
「飲み会である同僚男性がこう言っていた。『俺、女性の生理の日ってわかるんだよね。独特の匂いがするから。高校生の時から教室で誰が生理かわかったし、今も仕事場ですぐわかるよ』。そんな気持ち悪い話を聞いていたから嫌悪感しかない!」
そもそも、関係のない他人(お客さん)に公表してどうする?という疑問の声も多かった。
「お客様に『生理中です』って知らせてどうするの? そんなの従業員同士だけわかるように控室の掲示板に張り出してやればいい。それなら助け合ってカバーし合える。お客様には、こちらの体調が悪かろうが、生理痛ひどかろうが関係ないと思いますが」
「中高年男性社員にも『頻尿バッジ』とか付けてもらいたい」
また、生理バッジの導入よりも、生理中の従業員の福利厚生を考えるほうが先だという意見が多かった。
「生理バッジ導入するくらいなら レジに接客してないとき座っていい椅子を用意するとか、トイレに使っていいナプキンを置いておくとか、休憩時間を長くしてあげるとか、そういう対策を考えてほしい」
「女性は10代から50代まで、毎月ごとに4日間の出血や腹痛、精神の不調があるという事実。だからこそ、生理アピールのバッジじゃなくて、生理用品と生理痛のお薬の無償化、生理休暇が取りやすい環境づくりなど、より女性に寄り添った現実的なことがたくさん求められています」
「アタシ生理重いけど、職場が医療機関だからひどいときは自分から言うよ。『今日生理でしんどいから、迷惑かけたらすいません』って。もちろん男性職員にも言う。理解あるから『了解!つらかったら言ってね』って言ってくれる。同僚に理解がないなら理解させるってスタンスが大事。バッジは嫌」
バッジをつけることの危険性を訴える声も目立った。
「女性サイドが『生理だよ!つらいよ!わかって!』って気持ちは分かるけどさ、世の中にはおかしい人がいっぱいいるからね。生理の女性を見て欲情する変な男がいるということを頭の片隅に置いといたほうがいいよ」
「若い人は知らないだろうけど、 生理は不浄と考える男性もいるし、 それに性的興奮する人もいる。身を守るために公表しないほうがいいと思う」
こうした意見以外にもさまざまな問題点の指摘があった。
「今の私は、生理バッジを使うことがないから、周囲には『なぜバッジを使わないの』と聞かれ、理由を話すと、『生理がなくていいわねー』と無神経なことを言う人が必ずいて、二次被害にあう想像しかできない」
「バッジねえ~。職場のみんなに『私、生理だけど頑張ってま~す!』って頑張りアピールしている感じにしか思えない」
「中高年の男性社員にも『頻尿バッジ』とか付けてもらいたい」
最後にこんな意見も――。
「これを付けないと、具合悪そうなのに休ませてくれないような社会なら、すでに終わっている。自分で自分の首を絞める不寛容社会」
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、30~40代の働く女性に意見を聞いた。
「会社が配慮して店頭じゃないシフトにしてあげなさい」
40代の会社員Aさん。
「私自身は自分から知らせたいとは思いませんが、生理中の体調は個人差が大きいので、バッチをつけてでも周りにも理解してもらいたい人は一定数いるのでしょう。仕事に影響するほど具合悪い時は堂々と休めるような世の中であってほしいです」
40代のライターBさん。
「生理中に限らず、みんなどこかしら調子が悪い日はある。仕事で失敗したり、気分が悪そうだったりしたら、周りが察してあげればよい。『便秘中』『不眠症』『失恋中』『偏頭痛』『貧血』とか、いちいちバッジつけて知らせるのと一緒です。私だったら妙な気を使われるのは返って嫌。特に、職場の人に知られて異様に気を遣われてしまったら気持ち悪い」
30代の会社員Cさん。
「いやぁ、職場で配慮し合うのは必要かと思いますが、バッチつけてお客様にまでわかるようにあけっぴろげにする感覚が理解できません。生理中なのでサービスが行き届かないかもしれませんが、すみませんって、お客様にも気遣いを求めるため?百歩譲って、まぁアリとしましょう。具合悪そうに貧血そうにしてて、バッジ見て、『そうだったのね、つらいわね、座ったら?』って、お客様が声かけるとかあるかもしれませんけど。いやいや、そんな体調だったら、会社が配慮して店頭じゃないシフトにしてあげなさいよ。大丸の怠慢だなあ」
みなさん、自分は付けるのはごめんだ、という人が多かった。
なお、大丸は2019年11月28日、「生理バッジ」について多くの批判が寄せられたため、着用を取りやめると発表した。ただ、従業員同士の「生理の意思表示」は、別の方法で続けるという。
(福田和郎)