「専業主婦は孤独になりがち、周囲とつながろう」
――なるほど。それで、憲法まで持ち出して「働くべきだ」と強調するトゲトゲした批判の声が多かったのですね。一方では、投稿者に対して「働くってサイコーだよ、楽しいよ~」「働かないままだと社会とつながらなくて、将来困るよ」といった善意のアドバイスもあります。こうした意見についてはどう思いますか。
川上さん「『働いた方がいい』というアドバイスと、『働くべきだ』『働かなければならない』というアドバイスのあいだにはニュアンスの違いがあります。働くことが義務ならば、『働かなければならない』ことになります。しかし、世の中には働きたくても働けない環境の人もいます。『働かなければならない』という風潮が強くなると、そういう立場の人たちを追い込んでしまいかねません」
「一方、『働いた方がいい』という意見はわかります。仕事とは、必ずしも『稼ぎ』のためだけに行うものではありません。人生100年時代が言われ、現役期間は長くなっています。仕事そのものが生きがいとしての意味を持つこともあります。また、少子化で労働力人口が減少し続けている中、国や社会にとって、生産活動の担い手になるという意義もあると思います」
――つまり、「働いたほうがいい」というニュアンスの風潮が広がれば、生きがいを持って働きやすくなるということですね。ところで、投稿者に共感する声の大半は「家事や子育ても立派な仕事」「かつては専業主婦が主流だったのに、今は少数派だから叩かれる」「どういう生き方をするかは本人の勝手」といった意見です。こうした考え方をどう思いますか?
川上さん「投稿者さん自身がどうしたいかが一番大切だと思います。そういう意味では、周囲の声を過度に気にする必要はないのではないでしょうか。『家事労働も立派な仕事』という意見については、その通りだと思います。生活費を獲得するための『稼ぎ』と、家事や育児、地域での役割などの『務め』は、どちらも同じように大切です」
「かつては大半が専業主婦でしたが、いまは専業主婦と共働きの比率が約1:2になっています。専業主婦は少数派です。私たちの調査では、年代が上がるほど、専業主婦であることに誇りを感じている人が多い傾向がありますが、30代以下では7割の人がうしろめたさを感じると答えています」
――すると、投稿者のように若いのに「自信を持って専業主婦のどこが悪い?」と言い切れる人は珍しいですね。投稿者にはどうアドバイスしますか。
川上さん「勝手な想像ですが、投稿者さんはいろんなことがそつなくこなせる方なのではないかと思います。子宝にも恵まれ、自らは高学歴で優秀であることがわかります。一方で、社会に出て働いた経験がないことで、世間知らずな印象も与えてしまっているのかもしれません。投稿者さんご自身の本来の姿と、周囲に見えている姿とのギャップが大きい可能性があります」
「専業主婦は時に孤独になりがちです。もしママ友たちとの付き合いを大切に考えるのであれば、そのギャップを認識した上で振る舞うことをお勧めします。夫はもちろん、気の置けない友人などにも時折悩みを打ち明けたりして、わかってくれている人が周りにいる状態をつくっておかれると心強いのではないでしょうか」
(福田和郎)