孫社長はいかに? 巨大企業のワンマン社長は「独裁経営」のリスクを悟れるのか!(大関暁夫)

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QRコード決済のホントの「大きなメリット」とは何か

   そんな負担が大きく圧し掛かるなか、LINEは2019年12月期の決算見通しで300億円超の大幅な赤字転落を公表しています。同社は、会話アプリ事業という本業は順調であるにもかかわらず、LINEペイ関連のキャンペーン費用並びに新サービス関連のシステム開発コストが、足を引っ張ったとしています。

   この赤字が一過性のものであるのならやり過ごすこともできるのでしょうが、QRコード決済の主導権争いに当面決着がつく見通しがない以上、ソフトバンク、楽天に比べて規模で見劣りするLINEとしては、この主導権争いから脱落することなく勝ち残るために、今回ヤフーとの統合を決断したとも言えそうです。

   では、この争いにおいて主導権を取ることが、どれほど重要なことであるのか――。それを知るにはQRコード決済での主導権が単に決済手数料を増やすということにとどまらないビジネスで、将来にわたってとてつもなく大きなメリットが見込めるという点に着目する必要があります。

   それは、購買者個人に紐づけられた膨大な個人データを活用できるということであり、来るべき将来の新たなビジネスモデル、たとえば利用者の購買データを有料で第三者提供する情報銀行と言われるビジネスや、購買履歴や決済履歴を元に購買者を格付けする信用スコアリングビジネスなど、さまざまな未知・未開のビジネスの主役を務めることが可能になるわけなのです。

   ところが、同時に問題になるのが巨大情報産業化に伴う個人情報の取扱リスクです。これは単純な個人情報の漏洩リスクではなく、営利目的のビジネスとしての個人情報の活用が思わぬ方向にも行きかねないということです。

   その実例が、先人である中国のメガプラットフォーマー、アリババのグループのQR決済会社アリペイが手がける、芝麻信用なる信用スコアリングビジネスに見て取れます。アリペイの利用実績に応じてスコアが打ち出される芝麻信用で一定以上のスコアが取れない利用者は、希望するホテルに泊まれない、家が借りられないなどの逆差別が発生し、社会問題化しているのです。巨大情報産業が力を持ちすぎたがゆえに、営利目的での個人情報の活用に派生し大きな問題が生じているわけなのです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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