政府の旗振りで進められている「働き方改革」。その「副作用」で、男性の「隠れ」更年期障害の可能性がある人が1200万人を超えているという、衝撃的な調査報告がまとまった。
11月23日の勤労感謝の日を前に、「Dクリニック東京 メンズ」が働き方改革に取り組む会社に勤める20代~50代の働く男性500人を対象に、緊急調査。それによると、働き方改革で「残業時間が減った」と感じる人が73%を超えたにも関わらず、「働きやすくなった」と感じない人が半数以上、「仕事で感じるストレスが増えた」との回答が半数あった。
Dクリニック東京 メンズは、「今回の調査で働き方改革の『副作用』による新たなストレスで、『隠れ』男性更年期障害の可能性がある人の多さを裏付ける結果となった」としている。2019年11月11日の発表。
「イライラする」「疲れやすい」それって男性更年期障害かも?
これまで女性特有の病気と考えられていた「更年期障害」は男性にもあり、正式には「LOH症候群」「加齢男性性腺機能低下症候群」と呼ばれている。「やる気がしない」「集中力が続かない」「イライラする」「疲れやすい」「筋力が落ちた」「ビール腹になった」「性欲が沸かない」などの症状が現れる。
こうした男性更年期障害の原因は、ストレスによる男性ホルモン値の低下。女性の症状と異なる点は、年齢による発症ではないことと、性に関する症状が現れることという。
「働き方改革と健康に関するアンケート」は、「働き方改革」で実際に働きやすくなってストレスが減り、男性更年期障害のリスクは低減されているのかとの視点で質問。その結果、残業時間については73.0%の人が「どちらかというと減った」「とても減った」と答えたものの、働きやすさについて聞くと「働きやすくなったと感じない」人が半数以上の53.8% にのぼった。
また働き方改革以降、仕事で感じるストレスが「とても増えた」「どちらかというと増えた」人が半数という結果に。なかでも、30代は「とても増えた」という回答が最多。頼られる働き盛りはストレスが多いようだ。
ストレス増大で心理的な影響が......
なかでも労働時間、業務量、給料について感じるストレスは、30代の一般社員、管理職社員ともに回答が多く、このままだと30代が男性更年期障害を発症しかねない「予備軍」として浮き彫りになった 。
労働時間について感じるストレスは「ノー残業デーの翌日、そのしわ寄せがくる」が36.4%と一番多かった。また、「その他」の回答には、「サービス早朝出社をしている」(20代)と根本的な解決になっていないケースや「監視状態になっている」(50代)と窮屈に感じる人もいた。
制度に関するストレスについて聞いたところ、ストレスを感じていない人が多数である一方、働き方改革に向けて「導入したシステムが煩雑でかえって時間がかかっている」との回答が26.8%あり、本末転倒な状態になっている人もいた。「その他」の回答には、「名前だけの導入」(50代)、「その場しのぎばかり」(30代)と、かなりのストレスを感じている人もみられた。
下表のように、残業ができないのに業務量が変わらず、ストレスを抱える人が半数弱。残業を規制するだけでは、かえってストレスになりかねない現場の様子がうかがえる。
給料に関して感じるストレスでは、「残業時間が減ったので残業手当がつかない」が43.6%と最多。「税金が上がったのに残業時間で残業代が稼げず、生活が窮屈に感じる」という回答も35.6%にのぼった。残業代カットと増税の影響で、経済的なストレスも感じている傾向がみられる。「やることが増えたが、金額が変わらない」(30代)という声も少なくなかった。
筋トレや睡眠、バランスのよい食事でリスク回避
「心」「身体」「家庭」それぞれへの影響について聞いたところ、「心へ悪い影響があった」と答えた人は24.8%、「身体へ悪い影響があった」が18.8%、「家庭へ悪い影響があった」は11.6%で、心理的にストレスを受けている傾向がみられる。
ただ、いずれの面でも「よい影響があった」の回答数が多く、働き方改革は個々人への影響はおおむね良好のようだ。
Dクリニック東京 メンズ/Dクリニック大阪 メンズの男性更年期専門外来担当医の辻村晃氏(順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科教授)は、「男性更年期障害の原因である『テストステロンの低下』を防ぐには、筋トレや質のいい睡眠、バランスのよい食事です」と話す。
総務省の発表によると、2019年10月1日現在の20代~50代男性は3130 万人。これを、今回の「中等度・重度の男性更年期障害可能性」である41%を当てはめると、20代~50代の男性で約1200万人超が男性更年期障害の疑いがあるという。さらに「重度の男性更年期障害可能性」のみに絞っても27%にのぼり、同じ条件に当てはめても845万人に疑いがある、としている。