「トランプ大統領は利益とカネのことしか考えない人間」
こうした理由以上に韓国紙が心配しているのが「米国、いやトランプ大統領を本気で怒らせてしまった。韓米同盟が破棄されたら、どうやって北朝鮮と対峙するのか。また、どれだけ莫大な金をとられるか」という危機感だ。
朝鮮日報(11月18日付)「社説:GSOMIA破棄の影響に耐えられるか」は、まず「トランプ大統領は自らの利益と金のことしか考えない人間だ」と強調したうえで、米国の今後の出方について、次のように推測している。
「米国はGSOMIAの維持を今なお強く求めているが、その圧力は過去に経験したことがないほどだ。国防長官、米軍制服組トップ、韓米連合司令官、国務省幹部らが総動員で『GSOMIAは必ず維持すべきだ』と圧力をかけてきた。米国はGSOMIAを単なる韓日間の情報チャンネルとは考えておらず、(中国を包囲する)インド・太平洋戦略の基本的な枠組みと見なしている。韓国がこの枠組みを破壊するのであれば、米国は同盟関係を当然見直そうとするだろう」
「当初、韓国は日本との対立にGSOMIAを利用し、これによって米国を引き入れようとしたが、これが完全な敗着だった。安全保障問題で冒険をするのであれば、少なくともそれが可能な実力と能力が必要だ。米国が偵察衛星による北朝鮮情報を提供しないだけで、韓国軍はその目が完全に失われる」
韓国には「狼を追い払うために虎を呼び込む」ということわざがあるという。「日本を追い払うために米国を呼び込んだ」というわけだ。しかも悪いことに「自己の利益と金のことしか考えない」トランプ大統領に付け入るすきを与えてしまった。
朝鮮日報(11月18日付)はこう心配する。
「トランプ大統領はGSOMIA失効に伴う安全保障面でのマイナスを在韓米軍駐留費の大幅な引き上げによって取り返そうと考えるだろうし、自動車や鉄鋼の関税引き上げなど、貿易の分野で報復してくるかもしれない」
事実、米国はこの直後に韓国政府に対して、米軍駐留費負担額の5倍増を吹っ掛けてきたのだった。文大統領はこの要求を蹴ったが、米国はさっそく「在韓米軍撤収」という恫喝カードを切ってきた。
ハンギョレ(11月21日付)「社説:『在韓米軍削減』まで取り上げる度が過ぎる米国の圧迫」が米国の横暴ぶりを、こう悔しがる。
「今はあからさまに在韓米軍削減カードを取り出して揺さぶる様相だ。米国の防衛費分担金の増額圧迫は全方位的である。最近の数日間に、デービッド・スティルウェル国務省東アジア太平洋次官補、マーク・ミリー合同参謀議長、エスパー長官などが相次いで韓国に来て、『韓国はさらに負担しろ』と要求した。また、ハリー・ハリス在韓米国大使は、国会情報委員長のイ・ヘフン議員に会った席で、韓国が50億ドル(約5400億円)の分担金を払わなければならないという話を20回も繰り返した。イ議員は、『数十年間多くの米国大使に会ったが、これほど無礼な人は初めて』とひどく驚いていた。
防衛費分担金増額がトランプ大統領の中心政策であるため、官僚が積極的になるしかない事情はわかる。しかし最小限、『同盟』間であるなら、越えてはならない線があるはずだ。ただ『金』のために外交慣例を無視し、韓米同盟の根幹である在韓米軍問題まで持ち出すことは、かなり度が過ぎるものだ」