韓国で日本車に乗っている人への新たなバッシングが始まっている。これまでは日本車に乗っていても「不買運動が始まる前に買ったから」という言い訳が通用した。
ところが最近は、ナンバープレートを見ただけで不買運動のさなかに新車を購入したことがバレてしまい、「肩身の狭い思い」を余儀なくされている。
折しも韓国内では、日本車が軒並み大出血割引セールを強いられており、格安で手に入るとあって、日本車がほしい人にはジレンマだ。いったいどういうことか。韓国紙で読み解くと――。
8桁ナンバーだと「不買運動中に日本車購入」の証拠
不買運動の最中に日本車を購入したことがわかるのは、今年(2019年)9月からナンバープレートの仕組みが変わったからだ。朝鮮日報(2019年11月17日付)「韓国で後ろ指さされる8桁ナンバーの日本車」がこう伝えている。
「11月初めソウル市の中心街で日本製のレクサスが横断歩道の前でしばらく停止した。通行人が『不売運動の最中に日本車を買うなんて気が知れない』と怒りをあらわにした。京畿道郊外のあるビルの駐車場。遮断機が下ろされた駐車場の入口で1台の日本車がしばらくの間、立ち往生させられた。後ろにはクラクションを鳴らす車が列を成していた」
なぜ日本車に乗っていた人がこんな嫌がらせを受けるのか。それは、車のナンバープレートの番号が他のものよりも1桁多かったからだ。国土交通部(編集部注:日本の国土交通省に相当)は今年9月、これまで使用していた7桁のナンバープレート(例『12あ1234』)が飽和状態になったため、8桁のナンバープレート(例『123あ1234』)を取り入れた。
朝鮮日報は、こう続ける。
「これまで2桁だったナンバープレートの前の番号が3桁に増え、全部で8桁になった。この8桁の番号は思いもよらない役割を担うことになった。日本製品の不売運動への参加の是非だ。それ以前に買った車は仕方ないとしても、8桁のナンバープレートは(不買運動のさなかに)新車を購入した証拠になるためだ」
日本車の不買運動が始まったのは輸出規制開始の今年7月からだが、9月はまさにピークの真っ最中。8桁の番号は「売国奴的な行為」の動かぬ証拠だからたまらない。ソウル市西大門区に住む会社員のキムさん(36)は、朝鮮日報記者の取材に対し、こう苦渋の胸の内を明かすのだった。
「今年7月、トヨタ RAV4を購入した。車体の色彩に凝ったことで今年11月中旬に車を受け取る予定だ。だから8桁のナンバープレートを付けることになる。家族たちが安全に乗る車として選んだが、その選択がよかったか悩んでいる。8桁の日本車がオンライン上でさまざまな冷やかしの対象となり、道路でも嫌がらせをされかねないという話も聞いた。特に、ドライバーが女性の場合、嫌がらせの程度はさらに増すというし......」
ホンダ、日産に続きトヨタまで大出血割引セール
こうして8桁のナンバープレートの導入時期が不売運動のピークと重なったことで、ますます日本車を購入しづらくなった。このため利益を度外視した日本車の値引き合戦が始まった。泣く泣く値引きに追い込まれた日本車メーカーの惨状を朝鮮日報(11月17日付)「日本車、今では韓国が一番安い」がこう伝えている。
「『日本車を買うなら今がチャンスだ』『日本車は日本や米国より韓国が安い』 最近自動車のオンラインコミュニティーでは、こうした話題が交わされている。不売運動により韓国国内での市場シェアがわずか3カ月で4分の1水準(20.4%から5.5%)にまで下落した。これを受け、10月から日本車メーカーが一斉に大々的な割引イベントに乗り出した」
ホンダは約510万円の大型SUV「パイロット」を約140万安の約370万円で販売、在庫を完売した。日産も約540万円のインフィニティを約140万円安の400万円で売り出すなど、ほとんど車種に約94万円前後の割引セールを行なった。「割引なし」に固執したトヨタでさえも、車を買った客に数十万円相当の給油チケットを提供するありさまだった。
朝鮮日報では、こう結んでいる。
「業界では、いわゆる『シャイ・ジャパン』(日本製品をこっそり購入すること)を狙った戦略が功を奏したとみている。10月の日本車の登録台数は1977台と、9月の1103台に比べて80%近く増えた。前年同期に比べると相変らず低い水準だが、少なくとも7月以降では最高実績だ。100万円以上の大々的な割引は『一時的な方便』であるにせよ、ひとまず急な火の粉は消し止めた。1、2カ月前までは『このご時世に日本車を買うのか!』と批判する声が多かったが、最近では『どうであれ、安く買えればそれでいい』といった雰囲気だからだ」
(福田和郎)