企業の、東京五輪・パラリンピックへの期待感が薄れていることがわかった。帝国データバンクの「東京五輪に関する企業の意識調査」によると、2020年の東京五輪の開催が企業の業績にメリットが見込めそうな、「プラスの影響」があると答えた企業はわずか15%だった。2019年11月14日の発表
「影響はない」と回答した企業は56.1%。これと「マイナスの影響」があると答えた10.5%の企業を合わせると、66.6%の企業が、マイナスの影響やメリットが見込めないと考えている結果になった=下図参照(小数点第2位以下で調整)。「わからない」は、18.5%だった。
従業員規模が小さくなるほど「プラスの影響」なし
「プラスの影響」を地域別にみると、「南関東」が19.9%で最も高く「近畿」(17.5%)が2位。開催都市である「東京」は21.4%だった。従業員数別でみると、「1000人超」の37.9%の企業で「プラスの影響」を予想。一方、「5人以下」の企業は11.0%で、従業員規模が小さくなるほど「プラス」の割合は低くなる結果になった。
「プラスの影響」があると回答した企業を業種別でみると、旅館や建設機械器具賃貸などの「サービス」が17.5%でトップ。「金融」(16.8%)、「運輸・倉庫」(15.8%)が続いた。
ただ「運輸・倉庫」は、「プラスの影響」があると回答した企業が15.5%だったのに対して、「マイナスの影響」を予想する企業は20.9%と多かった。
「マイナスの影響」を指摘した「運輸・倉庫」の企業からは、
「都内の交通規制や交通混雑のため通常配送ができない。時間外労働の増加や配送荷物の遅延などが想定される」(東京都、一般貨物自動車運送)
「五輪期間中は断続的に交通規制の影響を受けるため、荷主が配送制限を設ける可能性がある。G20サミットのように数日で終わるものではないため、代替手段を検討することになるが、当社の売上に大きなマイナス要因になると思われる」(大阪府、一般貨物自動車運送)
といった声が寄せられた。
半数以上が関連売り上げ「ゼロ円」
東京五輪に関連する売上額が、これまで(2013~19年)あったかどうかを聞いたところ、関連する売り上げはないとする「ゼロ 円」が54.9%でトップだった。以下、「1億円以上10億円未満」(7.7%)「10億円以上50億円未満」(4.8%)の順。また、これから(2020~24年)の五輪に関連する売上額を聞いたところ、やはり「ゼロ円」が51.3%でトップ。「1億円以上10億円未満」が6.7%、「10億円以上50億円未満」の4.8%が続いた。
東京五輪の「恩恵」を受ける企業としては、フィットネスクラブやスポーツジムがあり、
「スポーツクラブにとっては、東京五輪をきっかけに会員数の増加が期待できる」(岐阜県、フィットネスクラブ)
といった意見があった。
帝国データバンクによると、東京五輪が日本経済の持続的成長に有効と考える企業は、今回の調査で46.8%と半数近くにのぼったが、五輪開催決定直後に行った調査と比較すると18ポイント以上減少。五輪による経済効果はあるとみている反面、終了後の景気減速を不安視する声や持続的な成長に懐疑的な意見も聞かれたという。
さらに、五輪期間中の働き方について、「通常とは異なる働き方を検討しているか」(複数回答)との問いに、企業の半数以上が「通常どおりの勤務」(51.9%)を想定。また、4社に1社の割合で「現時点で検討していない」(25.9%)と回答した。現時点で明らかな対策は、「物流や配送を抑制」(5.8%)、夏季休暇や振替休暇などの設定や有給休暇の取得奨励など「五輪期間中の休暇を設定」(4.7%)、「(出張や外出など)移動制限」(4.4%)などがあった=下表参照。
ただ、五輪期間中の勤務を「東京」だけでみると、「通常どおりの勤務」は35.2%。1 割を超える企業で「五輪期間中の休暇を設定」や、時差通勤など「出社時間の変更」を検討していた。
なお、調査は2019年10月17日~31日に、全国2万3731社を対象に実施。有効回答企業数は1万113社(回答率42.6%)だった。帝国データバンクの東京五輪に関する調査は13年10月、16 年5月に続いて3回目。