サプライチェーン崩壊の危機
著者はブレグジットにも、さまざまな局面で「分断」を招いているトランプ大統領にも、厳しい批判を浴びせる。
その理由は、世界に細かく行き渡ったサプライチェーンのネットワークを崩壊させるからだ。
たとえば、米国が排除に踏み切った中国ファーウェイは、米国の半導体メーカーの部品供給に支えられ成長した。その一方で、米アップルは中国での供給が目立つ。米ソ冷戦終結後に進展したグローバル経済化は、こうしたサプライチェーンの網の目を世界に広げたものだが、米中新冷戦で崩壊させることになりかねないという。
米国からファーウェイ排除の要請を受けたEUでは、EUとして態度を一本化できず、対応は各国判断としたが、これで相互依存の分断化が問題になった。
ブレグジットをめぐっては12月の英総選挙の結果がどうなるか、2020年1月末の離脱期限は守られるのか。年が明ければ米大統領選の道筋が徐々に見えてくるだろう。本書は格好のレファレンスになるはず。
「分断の時代 混迷する世界の読み解き方」
岡部直明著
日経BP社
税別1600円