この(2019年)10月に消費税が10%に引き上げられたばかりだが、立て続けにさらなる国民の負担増を求める提言が出され、話題となっている。それは、医療費のことだ。
【参考リンク】医療費、現役世代2600億円拠出減 健保連試算、75歳以上も2割負担なら(2019年10月25日付、日本経済新聞)
【参考リンク】消費税率10%超「国民的議論を」経団連提言(2019年11月11日付、日本経済新聞)
特に、日本経済団体連合会(経団連)のそれは「消費税のさらなる引き上げ」も含んでいるため、ネット上の庶民の反応は散々。とはいえ、安易に増税というだけで脊髄反射するのは早計だ。社会全体のトレンドを見れば、また違った景色が見えてくるものだ。
水面下で始まっている「さらなる負担の押し付け合い」
じつは、先の提言が相次いで出された背景には、日本医師会が9月に出した別の提言の存在があると筆者は考えている。
日本医師会版の要旨は、「増税だと(病院のお得意様である)高齢者の足が病院から遠のく可能性があるから、サラリーマンの社会保険料を増やしてほしい」というものだ。
【参考リンク】会社員の負担増を提案 医療制度改革で日本医師会(2019年9月18日付、日本経済新聞)
サラリーマンと無関係な医師会が勝手にサラリーマンの天引きを増やせと提言したわけで、これほどサラリーマンを馬鹿にした話もないだろう。きっと連合も経団連も激怒したに違いない。それが、対抗する提言をぶち上げた理由だろう。
すでに、大企業を中心とした健保組合の保険料収入の4割以上が高齢者医療に回されているという現実がある。そこから「さらに1兆円よこせ」と言われ、連合と経団連がタッグを組み「まずは高齢者の窓口負担を増やせ、どうしても財源が必要なら高齢者自身も負担する消費税にしろ」と、反論したわけだ。
そう考えると、冒頭の二つの提言に対する印象もガラリと変わるはずだ。筆者は、経団連の提言はすべての現役世代が支持するべき正論だと考えている。