【IEEIだより】福島レポート「正直」に発言すればいいわけではない!? 戦略としての反省(2)自粛と職業文化

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「正直な発言」で一番傷つくのは被害者

◆反省を伝える技術

   むしろ正直である方ほど、

「自分の心のうちを隠してはいけない」

と思うあまり、むしろ非難を受けてしまうことがあります。たとえばニアミスをした別のスタッフを庇おうとして

「人であれば当然そういうこともありますよね」

という「正直な発言」をした結果、患者さんの気分を却って害してしまう。そんな場面は日常診療でもしばしば目にします。

   また、「人を傷つけた」というショックのあまり反応ができなくなり、むしろ反省していないかのように受け取られてしまう方もいます。

   注意しなくてはいけないことは、このような正直な言動の結果、一番傷つくのは被害者の方々であるということです。

「こんなに苦しんでいるのに、相手が反省すらしてくれない」

   そう感じることにより、被害者の方はさらに傷を負ってしまうからです。つまり、たとえ「演技」であっても医療者が目に見える形の反省を示すことは、医療者と患者の両者を守るために必要な技術なのです。

「演技とは何事だ、形ばかりの反省に何の意味がある」

と、憤慨される方もいるかもしれません。しかし、医療者が内心でどんなことを考えていようと、それが患者さんを直接傷つけることはありません。つまり本当に患者さんのことを考えるのであれば、外面を整えることもまた、よい心を持つことと同じくらい優先させられるべきことだ、と私は考えています。

◆その「自粛」はいつまで

   それでは原子力産業界の方々がこの反省の技術を持っていないのでしょうか――。もちろんそうではないと思います。問題は、その技術を、多くの方が「事故後の特別な対応」と認識してしまっていることではないでしょうか。

「我々はいつまで自粛しなくてはいけないんだろう」

   原子力の関係者の方から、時折そう聞かれることがあります。そこには、事故の前まではできていた原子力についての前向きな話題を、容易には口にできなくなってしまったという強い抑圧感も窺われます。

「そろそろ原発事故のことばかりでなく、前向きな話をしたい」

   熱意のある方がそう思ってしまう気持ちは、誰にも止められないでしょう。しかし、では公の場やSNSに流され得るような場で、その発言がなされてよいかと言えば、やはりこれまで福島の方々と関わってきた者として、「否」と答えざるを得ません。

   反対に、今「自粛」と呼ばれている多くの態度は、新たな職業文化として定着させる必要があるのではないか、と思っています。それは決して福島への思い入れからくる感情論ではありません。むしろ、そのような「マナー」こそが、業界の方々を無意味な炎上から守る戦略だと思うからです。

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